CCS技術を蓄積して事業化に備える日本企業

Organisation: Global CCS Institute

CCS技術を蓄積して事業化に備える日本企業

1.    日本のエネルギー事情
日本では、福島の原発事故以来、産業活動の基盤である電力の安定供給が重要な課題となっています。現在、すべての原発(54基、約50GW、福島第一を含む)が停止しており、それを既存の火力発電で補っています。しかし、その多くが老朽設備を再稼働させたものであり、効率およびコスト面で大きな負担となっています。そのため、電力各社は、現在、火力発電設備の新規入札(約10GW)を進めています。一方、火力発電の増設は地球温暖化対策上の大きな課題であり、CO2排出量の抑制の議論と共に、CCSへの関心が高まっています。
日本の企業は、先進的な省エネルギー技術の開発でCO2排出量の低減に貢献してきましたが、それだけでなく、政府や電力会社などと連携してCCSに関する開発投資も進めてきました。彼らの多くは、Global CCS Instituteに加盟し、そのネットワークを通じて海外との連携を深めることを大いに期待しています。そこで、今回は日本の民間企業に焦点を当てその活動を紹介します。

2.    開発投資が進んでいる3つの業界
日本におけるCCSに関する企業活動は、エンジニアリング会社が先行し、その後、電機業界そして建設業界と続いています。各々、石油ガス事業、電力事業そして土木事業を背景にした企業活動です。
石油ショックの後1970年代後半から石油ガス事業で、CO2利用を含む石油増進回収(EOR)への取組みが始まりました。但し、国内の油田・ガス田等が少ないため、海外のプラント事業を進める形で技術が蓄積されました。その後、1990年代に始まった国連の地球温暖化対策の活動を受けて、国内の電力事業及び製鉄事業についてCO2排出削減策の検討が始まり、CO2回収技術の開発がスタートしました。更に、2000年代後半からは、それまでのLNG関連の実績をベースにCO2の輸送・貯留に関する土木事業が本格的に検討されました。
現在、著名な企業が各々の分野で開発を継続しています。具体的には、石油ガス事業でCO2回収・輸送・貯留に実績のあるエンジニアリング会社として、日揮、千代田化工、東洋エンジニアリング他があります。彼らはそのCO2回収技術を産業分野(化学肥料プラント事業)にも展開しています。電力事業では、主にCO2回収技術に焦点をおいた電機メーカーとして、三菱重工業、日立(現、三菱日立パワーシステムズ)、IHI、東芝他があります。彼らは、自社資金や電力会社との共同研究により石炭焚きおよびガス焚きの排ガスからのCO2回収技術を開発しました。その過程では、圧力・温度スウィング法、化学吸収法および酸素燃焼法など多面的に開発を進め、その技術を蓄積しています。製鉄関係では、新日鉄住金エンジニアリングが高炉ガスからのCO2回収技術を開発しています。また、CCSに関心の高い建設会社には大成建設や鹿島建設などがあります。この部門では、CO2の船舶輸送システムに必要な出荷基地・昇圧設備や、一時貯蔵タンクなどの設計検討を行っています。また、大深度地下での地下水流動や地盤応力変形の数値解析技術を生かし、CO2地中貯留に関わる数値シミュレーションを多数実施しています。

3.    日本企業が関わる国内外のプロジェクト
現在、日本政府や電力会社などが出資するCCS大型実証プロジェクト(通称 苫小牧プロジェクト、CO2処理量10万トン/年)には、日揮が石油精製施設内の水素製造プロセスからのCO2回収を担当しています。また、日本近海での海底下地中貯留を想定するシャトルシップ構想には千代田化工が中心的な役割を担っています。更に、東洋エンジニアリングは、昨年、ブラジルの洋上原油生産プラントにおけるCCS設備(約100万トン/年)を完成させました。このプロジェクトは、Global CCS Instituteの2013年の年報の中でもLula Oil Field CCS Projectとして記載されています。 彼らは、高圧条件下での分離膜技術を使ってCO2を回収し、更に高圧(500気圧)の圧入技術を誇っています。
火力発電所に関わるCO2回収技術(常圧条件)の開発では、東芝はその関連会社にある石炭火力発電所にCO2回収試験設備(化学吸収法、10トン/日)を作り、
J POWER(電源開発)は IGCC試験設備にCCSの回収試験設備(化学吸収と物理吸収、24トン/日)を設けて、試験を行っています。また、海外の大型実証プロジェクトへの取組として、三菱重工業が米国でサザンカンパニー社の回収試験設備(化学吸収500トン/日)を担当し、 日立(現 三菱日立パワーシステムズ)はカナダでサスクパワー社の回収試験設備(化学吸収120トン/日)を、そして IHIは豪州でカライドでの回収試験設備(酸素燃焼 70トン/日)を各々進めています。この分野では、各企業が積極的に自己投資を進め、それぞれ運転実績を蓄積し、その事業化レベルはAlstomやShellなどと並ぶ高い水準にあると思われます。
貯留関係では、大成建設はCO2の地中挙動や周辺環境影響を評価するためのシミュレーション技術の開発を米国ローレンスバークレー研究所と協力して進め、豪州ZeroGenや米国WESTCARBなどの海外プロジェクトで実績を積み、スーパーコンピューターを使った大規模計算技術は世界でもトップクラスにあります。
以上は代表的な事例ですが、詳細については次稿以降で順次紹介する予定です。
4.    まとめ
・日本の著名な企業は、CCSについて早くから関心をもち、エンジニアリングの推進およびCO2回収技術の事業化並びに貯留後のCO2挙動評価を進めてきました。これまでの実績から判断して、すでにいつでも参入できる(ready-to-go)な状況にあると言えるでしょう。彼らは、Global CCS Instituteの日本メンバーとして相互に連携を深めるとともに、そのネットワークを通じて世界の各地域と連携して、地球温暖化防止に貢献する意欲に満ちています。
以上

出典:
・日本原子力技術協会 Home Page「本日の運転状況(2014年3月5日現在)」
・日本経済新聞 「東電、火力600万kW入札」第9面 (2014年3月26日)
・日揮 ニュースリリース「CO2の分離回収圧縮設備建設工事を受注」(2012年11月29日)
・東洋エンジニアリング ニュースリリース「ブラジル向け洋上原油処理設備を受注内定
―CO2回収・貯留技術を採用―」(2010年11月1日)
・三井海洋開発 HomePage FPSO/FSOのプロジェクト
・Global CCS Institute日本事務所主催 第7回勉強会資料「シャトルシップ船・洋上圧
入方式によるCCSの概要」2013年5月16日(航空会館)
・三菱重工技報 Vol.27 No.1 (2010)
・日立ニュースリリース「サスクパワー社と共同でCO2回収実証試験」(2012年3月21日)
・東芝レビュー No.11, Vol. 68 (2013)
・JPower  Annual Report (2010)
・JPower IHI ニュースリリース「カライド酸素燃焼プロジェクト」(2012年12月17日)
・海洋研究開発機構「地球シミュレータ産業戦略利用プログラム」利用成果報告書
(平成19年度~平成24年度)
・エンジニアリング協会 革新的ゼロエミッション石炭ガス化発電プロジェクト
「CO2輸送システムの概念設計」成果発表会資料 (2013年8月25日)