日本が提案する新たなクレジットメカニズム - JCM/BOCM

京都メカニズムの柔軟性措置の一つであるCDM(Clean Development Mechanism)は、2004年11月に最初のプロジェクトが登録されて以来、着実に登録プロジェクト数を増やし(現在は約6,700件)、クレジットを生み出してきましたが、現在は極めて厳しい状況にあります。2013年から始まった京都議定書の第二約束期間には、日本などが参加せず国際間の排出権取引ができないことなどから、クレジットの需給バランスは大きく崩れ、クレジット価格は1ユーロ以下など極端に下落しています。一方で、CDMについては以前から多くの課題が指摘されていました。例えば、プロジェクトの「追加性」について、制度が定める極めて特有な条件をクリアしなければならず、プロジェクト形成の大きな課題となっていました。また、CDMは運輸交通分野や省エネ分野のプロジェクトには適用しにくく、広がりのある制度とは言い難い状況でした。特定の国々にプロジェクトが集中していることも、CDMという制度に何らかの問題点があることが示唆されます。

このような課題や今後のさらなる緩和対策の推進を目指して、UNFCCCでは、CDMなどの現状の柔軟性措置を改善・補足すべく、新たな市場メカニズムやフレームワークの検討を行っています。新たな市場メカニズムの導入についてはCOP16での決定(Decision 1/CP.16, paragraph 82)を受けて、2011年2月21日までに、オーストラリア、中国、ノルウェー、ペルー、日本など19の国から「緩和対策の費用対効果の向上や促進を行うための新たな市場メカニズム」に関するサブミッションが行われました。さらに、2012年8月に、日本はAWG-LCAに「緩和対策の費用対効果の向上や促進を行うための市場活用を含む様々なアプローチ」の案を提出しました。

日本が提案する新たなアプローチは、二国間オフセット・クレジット制度((Joint Crediting Mechanism(JCM)/Bilateral Offset Credit Mechanism(BOCM))と呼ばれています。JCM/BOCMは、地球規模の排出削減・吸収に貢献するため、開発途上国の状況に応じて柔軟かつ迅速に対応しつつ、温室効果ガス排出削減技術・製品・システム・サービス・インフラ等の普及や対策を実施し、それらによる温室効果ガス排出削減効果を測定・報告・検証(MRV)可能なものとし、先進国の排出削減目標の達成に活用するものです。CDMを補完する役割を有し、国連気候変動枠組条約の究極的な目的の達成に貢献するために、日本の経済産業省や環境省が制度設計を進めているところであり、運用のガイドラインやMRV方法論などが構築されつつあります。

JCM/BOCMの大きな特徴は、主として開発途上国および先進国の二国間の合意に基づいて、気候変動緩和策を推進することにあり、UNFCCC CDM理事会のもとで進められているCDMとは大きく異なるものです。運用時には、二国間の政府関係者から構成される合同委員会(Joint Committee)を設置し、制度を推進するためのルールやガイドライン、方法論等を策定・改訂します。また、プロジェクトの登録やクレジットの発行も二国間で行うことを想定しています。CDMとの大きな相違は、CDMがCDM理事会の管理下ですべてのプロセスを実施するのに対し(中央集権的構造)、JCM/BOCMでは多くのプロセスを二国間の合意に基づいて行うことにあります(分権的構造)。方法論の策定・改訂も基本的には二国間で行われます。このような分権的な構造によって、開発途上国の個々の実情に応じた対策を推進しやすくなるとともに、簡易かつ実用的な制度とすることを目指しています。

既に日本といくつかの国との間で、二国間オフセット・クレジット制度に関する二国間文書が署名されています。2013年1月にはモンゴルと、同年3月にはバングラデシュとの間で署名が交わされました。モンゴルについては、既に第1回の合同委員会が開催され、本制度に係る基本的なルールや同委員会の運営規則が採択されています。

JCM/BOCMでは、排出削減量の定量化のためにCDMとは異なる独自のMRV方法論を用います。MRV方法論の策定は、環境省や経済産業省が実施するFS(フィージビリティスタディ)等による案件形成とあわせて進められています。FSや方法論策定は、既にアジアやアフリカを含む多くの国々で実施されており、JCM/BOCMに関する開発途上国側のキャパシティビルディングも同時に進められています。

MRV方法論については、論理的かつ透明性の高いものであることが重要ですが、CDMのような難解で実務的でない方法論は避ける必要があります。また、方法論は二国間で作成されることになりますが、関係各国間で何らかの整合性は保たれるべきと考えられます。例えば、同じ技術の方法論で国によってロジックが異なるなどの事象は国際社会での説明上、望ましくないと思われます。さらに、簡素化された制度を目指していることから、排出削減量の保守性についても十分に留意する必要があります。この点については、制度側では、将来のいわゆるベースライン排出量について、BaU(Business as Usual)よりも保守的なリファレンスシナリオを設定することで対応すべく検討されています。クレジット化に際しては、CDM等の他の制度によるクレジットとのダブルカウントを防ぐ仕組み作りが必要なことは言うまでもありません。

今後、日本政府は、JCM/BOCMへの参加を希望する各国と二国間でルール作りを進めていくと同時に、UNFCCCとの交渉を進めることで「様々なアプローチのための枠組み」としての実現を目指します。この際、国際的な理解を促進するためには、様々な場において取り組みの進捗状況等について継続的に説明していくことが重要と思われます。

なお、JCM/BOCMの詳細は、「新メカニズム情報プラットフォーム」をご参照下さい。