大気中CO2濃度400ppm超えのインパクト

Organisation: Global CCS Institute

C.D. Keeling博士が1958年から観測を始めたハワイ・マウナロアにおける大気中CO2濃度が400ppmを超えました。2013年5月9日に日平均値がはじめて400ppmを超え、そして5月第5週(5月26日〜6月1日)には週間平均値として400.03ppmを記録しました。日本の気象庁が観測を行っている綾里(岩手県)、与那国島(沖縄県)、南鳥島(東京都)においても、それぞれ本年1月、昨年2月、本年4月に月平均濃度が400ppmを超えています。地球温暖化による気温の上昇を2℃以下に抑えるためには、400ppm以下に安定させる必要があるという指摘がありますが、既に不可能な現実となっています。

筆者は東北大学大学院に所属していた頃、大気中の温室効果ガスの濃度を分析していました。主にシベリア上空の温室効果ガス濃度の分析をテーマとしていましたが、その頃(1995年)のマウナロアの濃度はおよそ360ppm(年平均値)でした。毎日、フラスコに充填された各地の空気をNDIR(Non-dispersive Infrared Analyzer:非分散型赤外分析計)で分析していましたが、記録紙のメモリを読みながら、400ppmに達するのはずいぶん先のことだろうと推測していたことを思い出します。

しかし、大気中のCO2濃度は極めて急激に増加しています。マウナロアでは1960年代に年々の平均増加率が0.8ppm/年であったのに、2000年代には2.0ppm/年と2倍以上の割合で加速的に増加しはじめています。特に2012年の増加率は2.65ppm/年と過去最大の増加率となっています。2012年の年平均濃度が393.82ppmであり、ここ10年の年平均増加率が2ppm程度であることを勘案すると、マウナロアの年平均濃度が400ppmを超えるのは2〜3年後と推測されます。

大気中のCO2濃度は、18世紀半ば以前は280ppm程度であり、既に40%以上増加しています。また、氷床コアの分析によって、過去数十万年にわたる温室効果ガス濃度の変動が明らかにされています。大気中のCO2濃度は、大きな周期で変動を繰り返してきていますが、これは自然現象としてのゆるやかな変化であり、近年のような急激な増加とは異なるものです。氷床コアから推定された過去約65 万年間の二酸化炭素濃度の変動は180~300ppmの範囲とされており、昨今の濃度はこれを大幅に上回っています。[1]

このような大気中のCO2濃度の増加は、言うまでもなく人間活動に起因しています。地球上の平均気温が上昇傾向にありますが、それは自然要因の範囲であるなど、人間活動と地球温暖化を結びつけることについて懐疑論が絶えません。しかし、先般のIPCCの報告にもありますように人間活動によってCO2などの温室効果ガスが排出され、大気に蓄積され続けていることに疑いの余地はありません。CO2排出量は、世界全体で、1751年の1,100万トンから2009年の320.39億トンに大幅に増加しています。人間活動に伴うCO2排出量は、1800年頃までは大きな変化は無かったと推定されていますが、産業革命前後(1700年代後半)から増加しはじめ、第2次世界大戦以降(1950年前後)、急増しています。[2]

UNFCCCは、マウナロアのCO2濃度が400ppmを超えたことを受けて、2013年5月13日に"Media Alert"を発出しました。「我々は歴史的な閾値を超え、新たな危険域に入った」とし、「世界は目を覚まし、人間の安全保障/福祉、経済発展においてこれが何を意味するかを認識しなければならない」としています(以下に全文引用)。

"400ppm"は単なる数字にしか過ぎません。しかし、我々は何かの基準や指標をもって行動することが多くあります。この数字をきっかけに、国際社会、各国、あらゆる組織、そして私たち一人一人がこの問題を再認識し、温室効果ガス排出削減あるいは貯留に関する取組を着実かつ加速的に進めていくことが必要とされています。

 

"With 400 ppm CO2 in the atmosphere, we have crossed an historic threshold and entered a new danger zone. The world must wake up and take note of what this means for human security, human welfare and economic development. In the face of clear and present danger, we need a policy response which truly rises to the challenge. We still have a chance to stave off the worst effects of climate change, but this will require a greatly stepped-up response across all three central pillars of action: action by the international community, by government at all levels, and by business and finance."

 

1. IPCC: Climate Change 2007: The Physical Basis. Contribution of Working Group I to the Fourth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change. Solomon, S., Qin, D., Manning, M., Chen, Z., Marquis, M., Averyt, K.B., Tignor, M., and Miller H.L. (Eds.), 996 pp, Cambridge University Press, 2007

2. Carbon Dioxide Information Analysis Center, Oak Ridge National Laboratory, 2012