最新ニュース

最新ニュース

最新ニュース

インサイト&コメンタリー:中国、セメント部門で世界最大の酸素燃焼CCUSプロジェクトで操業開始

15th July 2024

トピック: Institute News

発行日:2024年7月15日

原典:グローバルCCSインスティテュート

 

トピック:中国CO2貯留

 

中国は、セメント市場の世界的なリーダーであり、2022年には世界生産量の半分以上を占めています。しかし、この支配的な立場は、環境面で大きな代償が伴うものです。セメント産業は、同国の総CO2排出量の13%を占めており、2020年には排出量が13億トンに達したことから、発電と鋼鉄に続いて3番目に排出量が大きい部門となっています。2060年以前に炭素中立を達成するという中国のコミットメントを考慮すると、セメント産業の大幅な脱炭素化努力は不可欠です。

 

中国政府は、国の炭素中立目標の達成におけるセメント部門の極めて重要な役割を認識しており、CO2回収・利用・貯留(CCUS)がソリューションの一部となるべきことを認めています。2022年11月2日に中国工業情報化部、中国国家発展改革委員会、中国生態環境部及び中国住宅都市農村建設部が共同発表した「建材産業におけるカーボン・ピーキングに向けた行動計画(Action Plan for Carbon Peaking in the Building Materials Industry)」は、同部門におけるCCUSの研究開発の加速を呼び掛けました。また2024年5月27日、中国国家発展改革委員会は、「セメント産業における省エネ及びCO2削減に向けた特別行動計画(Special Action Plan for Energy Saving and Carbon Reduction in the Cement Industry)」を発表しました。この計画は、2025年末までの具体的な目標を設定し、2030年の方向性を提示するものです。

 

中国のセメント企業は、同部門におけるCCUSの脱炭素化の可能性を認識しており、その適用可能性及び技術的な実現可能性を実証するための手段を講じています。2018年、中国最大級のセメント生産者である安徽海螺水泥(Anhui Conch)は、年間50ktの能力を持つ同国初の統合型セメントCCUSプロジェクトの本格操業を開始しました。このプロジェクトは、同社白馬山(Baimashan)セメント工場のセメント・キルンにおけるCO2回収にアミン・ベースの手法を使用しています。

 

今年、中国のセメント産業はもう1つの節目を達成しました。2024年1月9日、中国建材集団(China National Building Material Group)の一部であるChina United Cement Company社は、山東省青州市における酸素燃焼セメント・プロジェクトの試運転に成功し、年間20万トンのCO2を回収しています。このプロジェクトは、酸素燃焼とCO2回収を組み合わせた、世界セメント産業で最大のものであり、この技術が初めて脱炭素化のために産業利用されたことを示すものです。2024年5月までに、このプロジェクトは、全ての試運転試験に合格しています。

 

このプロジェクトの技術及び設計・調達・建設(EPC)業務の双方は、こちらも中国建材集団が所有する中国天津水泥工業設計研究院(Tianjin Cement Industry Design & Research Institute)が提供しました。酸素燃焼の工程は、窒素を多く含む周囲の空気を酸素に置き換えることで、セメント工場の排ガス中のCO2濃度を80%以上に引き上げます。青州市プロジェクトのCO2濃度は、圧力スイング吸着と低温蒸留工程を経た後、99.9%以上になります。濃縮されたCO2は、石油増進回収等に利用されます。工学設計は2022年12月に完了し、建設は2023年6月開始、2023年12月完了、試運転は2024年1月から開始しました。このプロジェクトの総投資額は、約2億6,000万人民元です。

 

酸素燃焼は、濃度の高いCO2流を発生させることができ、それによって回収を容易かつ安価に行うことができる可能性があることから、CO2回収の有望な技術的経路です。[1] しかし、酸素分離の費用を削減し、同技術を様々な産業環境に適応させるためには、更なる開発が必要です。青州市プロジェクトは、この学習プロセスの極めて重要なステップです。特に、中国は、酸素燃焼の研究において長い歴史を持っています。2015年1月、中国華中科技大学(Huazhong University of Science and Technology)は、年間100ktの回収規模を持つ35MW規模酸素燃焼発電プロジェクトの実証を開始しました。加えて、中国は、鋼鉄や石油化学部門における酸素燃焼の利用も研究しています。

 

アミン・ベースの回収や、カルシウム・ルーピング等、セメント部門における他のCO2回収技術と比較して、酸素燃焼は、特有の利点と課題を示しています。[2] アミン・ベースの燃焼後回収技術は、現時点ではより成熟しているものの、セメント工場では通常、低効率となります(エネルギー損失が多い)。もう1つの有望な技術であるカルシウム・ルーピングは、潜在的な利点があるものの、こちらも更なる開発と最適化を必要とします。酸素燃焼に焦点を当てたことで中国が得た経験は、同国のネットゼロ努力を支援できるだけでなく、排出削減が困難な産業におけるCCUSを追求する上で世界的な技術進歩にも貢献できます。

 

図:青州市酸素燃焼セメント・プロジェクト・サイトのCO2貯留タンク(天津水泥工業設計研究院提供)

­­­­­­­

[1] Saeed Talei, Fozer, D., Petar Sabev Varbanov, Szanyi, A. and Mizsey, P. (2024). Oxyfuel Combustion Makes Carbon Capture More Efficient. ACS Omega, 9(3). doi:https://doi.org/10.1021/acsomega.3c05034.

[2] Hanifa, M., Agarwal, R., Sharma, U., Thapliyal, P.C. and Singh, L.P. (2023). A review on CO2 capture and sequestration in the construction industry: Emerging approaches and commercialised technologies. Journal of CO2 Utilization, 67, p.102292. doi:https://doi.org/10.1016/j.jcou.2022.102292.

 

本記事は、グローバルCCSインスティテュートの中国担当マネージャー(Country Manager China)であるXiaoliang Yang 博士が執筆しました。

 

 

Back to News

ニュースレター

最新のCCSの情報が欲しい