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CCSの方針転換:成長機会の提供と産業転換への融資
12th May 2020
CCS in the news 日本語版
発行日:2020年2月28日
今年は、欧州及び英国の気候行動において最も重要な1年となるでしょう。2020年、EUはグリーン転換を支援する欧州グリーン・ディール(European Green Deal)に含まれる一連の新しい野心的な政策や措置を展開します。英国もまた、初めて、イタリアとのパートナーシップの下、UNFCCC気候会議COP26を主催します。これは、英国及び欧州双方の野心的な排出削減目標とあいまって、産業界の迅速な脱炭素化を保証するために切望されている技術であるCCSに関する議論に新しい機運をもたらしています。
このような背景の下、グローバルCCSインスティテュートは2月18日にベルギー・ブリュッセルにて、EU英国代表部(UK Mission to the European Union)と共に、産業界における脱炭素化に関するイベントを共同主催し、産業部門におけるCO2排出量を大幅に削減する取り組みを支援するにあたってCCS技術がどのような役割を担えるか、また、どのようにこれらの技術を必要な速度で普及させるかについて検討しました。同イベントには、金融部門、政策立案者、NGOs及び産業界からの代表者達が集まりました。
イベントは、英国及びEUのCCS目標に光を当て、CCS技術、プロジェクト及びCO2インフラを開発・普及させるために利用できる手段及びチャンスを検討する機会となりました。
イベントでは、Per-Olof Granström氏(Zero Emissions Platform(ZEP)EUディレクター)、Adrian Rimmer氏(ロンドン証券取引所グループ グリーン・ファイナンス担当上級アドバイザー(London Stock Exchange Group Senior Advisor for Green Finance))、Aniruddha Sharma氏(Carbon Clean Solutions社CEO)及びSam White氏(英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(UK Department for Business, Energy and Industrial Strategy:BEIS)産業脱炭素化担当課長代理(Deputy Director for Industrial Decarbonisation))とのパネル・ディスカッションが行われました。
2020年はCCSに新たな弾み
ブリュッセルでのイベントは、CCSに対する現在の前向きな機運を反映すると共に、同技術が既存プロジェクトと共にどのように成熟していったかについて光を当て、同技術の現状を、実証済みで安全かつ拡張可能な気候緩和ソリューションとして紹介しました。
インスティテュートは、CCSの世界における概観を示すべく、2019 Global Status of CCS Report(世界のCCSの動向:2019)の調査結果を紹介し、CCSの世界的な機運が去年1年どのように高まり、重要で前向きな政策展開と共に、操業中又は開発後期にあるプロジェクト及び施設の件数が増加したのかについての見識を、参加者に示しました。
英BEISのSam White氏は挨拶の中で、主要な産業クラスターを脱炭素化させるためにCCSを普及させるという英国政府の目標を紹介すると同時に、同技術に関する将来の欧州議論において英国のことも考慮する重要性に言及しました。同氏はまた、電力部門、産業部門及びCO2貯留のためのCO2回収・利用・貯留(CCUS)のビジネス・モデルに関する昨年の政府コンサルテーションについても詳述しました。
2020年は英国のCCSにとって重要な1年となります。White氏はまた、CCS及び低炭素水素の製造を支援する商業モデルに関して進行中の作業等、CCS活動にインセンティブを与え、産業脱炭素化の障壁を取り除く政策を策定する英国政府の取り組みについても言及しました。
ZEPのPer-Olof Granström氏は欧州の観点を示し、ここ数か月におけるCCSに関する重要かつ前向きな展開について強調しました。沖合貯留のためのCO2の越境輸送及び輸出を可能にするロンドン議定書(London Protocol)の改正決定、最近の欧州議会決議(特にCOP25決議)におけるCCSに関する前向きな記述、並びに、CCS普及機会に関
して複数の加盟国から寄せられる前向きなシグナル等、これら全てが欧州のCCSに大きな変化をもたらす一助になっています。
Granström氏はまた、自らの発言の中で、欧州におけるCCS普及の今後の機会についても聴衆に見識を語りました。同氏は、3月10日に発表されるIndustrial Strategy(産業戦略)を皮切りにCCSの開発と普及を支援する欧州グリーン・ディールの取り組みについて、詳述しました。グリーン・ディールはまた、EU ETSの見直しと国境炭素税の調整によって、CCSへのより強い投資根拠を構築する機会にもなります。CO2インフラもまた、グリーン・ディール気候目標の実現の主要因となるでしょう。TEN-E(Trans European Network-Energy(の見直しは、スマートCO2インフラ構築の枠組設定に役立つことになります。国家エネルギー・気候変動計画(National Energy and Climate Plans:NECPs)は、CCS及び水素に関する戦略を持つEU加盟国と向き合い、同技術の普及を前進させるための重要なツールとなるでしょう。
イベントはまた、ガス並びに鉄鋼、セメント及び廃棄物焼却工場等の産業利用のためのCO2回収及び分離技術に取り組むトップ企業であるCarbon Clean Solutions社の取組を紹介する機会でもありました。同社CEOのAnirrudha Sharma氏は、世界的な投資企業3社から最近、1,600万ドルの投資を受けたという重要な新しい発表を参加者達と共有しました。日本の総合商社である丸紅、クリーン・エネルギー未公開株式投資会社Wave Private Equity Partners社及びChevron社のコーポレート・ベンチャー・キャピタル部門であるChevron Technology Ventures社は共同で、モジュール式で拡張可能かつ持ち運び可能なCO2回収技術に投資しています。Carbon Clean Solutions社は、手頃な価格のCO2回収ソリューションの開発に力を注いでいると共に、大幅な費用削減及び2021年までにCO2回収費用30ドル/tを達成すべく、「コンテナ化」されたソリューションの開発にも投資する予定です。
気候中立のためファイナンス取り付け
低炭素経済に向けたグリーンな移行を促進し、支援するにあたって、市場は極めて重要な役割を担っています。産業の迅速な脱炭素化には、低炭素技術、インフラ及びプロジェクトへの大規模な資金と投資をより上手に取り付け、呼び込むことが求められます。CCSのようなクリーン技術への投資を支援するには、新しい資金調達源も必要となってきます。
イベントでは、ロンドン証券取引所グループにおいてグリーン・ファイナンス担当上級アドバイザーを務めるAdrian Rimmer氏が、CCS部門及びプロジェクトに資金を呼び込む潜在効果オプションについて発表しました。資本市場証券や上場企業によるグリーン経済商品・サービスのための株式資本市場へのアクセスが、CCS開発の鍵です。
Rimmer氏は、ロンドン証券取引所のGreen Economy Mark(グリーン経済マーク)が、グリーン経済を支援する企業及び投資を特定する機会を投資家に与えることを説明しました。これは、企業の可視性を上げる詳細なタクソノミーに反映されています。CCSは彼らのタクソノミーの一部であり、これには、大手コンサルティング企業、グリーン・テクノロジー企業及びエンジニアリング企業など、全産業のCCS活動及びサービスの情報及び収益が網羅されています。
同グループはまた、現在、投資家達と共に、トランジション・ボンド分野の市場を創設する作業に取り組んでいます。新しい金融商品は、信頼性のある移行計画を持つ産業及び企業を支援することが出来ます。債権金融は、CCS配備による排出削減を目指している企業の投資及びプロジェクト実施を支援できる可能性があります。トランジション・ボンドを利用した新しい形の資金調達は、信頼性ある移行計画を持つ企業を、それを実行する資金使途と組み合わせることで助けることが出来るかもしれません。CCS技術は、この戦略の中核となる可能性があり、また、新しいタイプの債券は融資ギャップを埋めることが出来ます。
今後の見通し
今年は、英国、欧州そして世界的にも、CCS普及にとって胸躍る展望に満ちた1年となるでしょう。産業、政策及び金融部門からの様々な声を集めることで、同イベントは、英国及び欧州が、産業を脱炭素化させるためにどのようにCCS開発を利用できるか、またCCS目標を達成するために政策と投資を整合させる可能性をどのように利用できるかについて、光を当てるものとなりました。