最新ニュース
CCUS専門家達、施設を援助する「CO2貯留公益事業体」の創設を米カリフォルニア州に提案
16th April 2020
発行日:2020年4月16日
CO2回収・利用・貯留(CCUS)専門家達が、米国カリフォルニア州当局者達に対して、いくつかの提言の1つとして、CO2貯留及び輸送の管理者となることよって同技術の進歩を加速させ、それによって企業が温室効果ガスの回収のみに集中できるようする、CO2「貯留公益事業体」設立の検討を促している。
「このアイディアは、カリフォルニア州がその方向でより多くの調査を行うというものだ。公益事業体があれば、正しい場所を選択でき、飲料水の安全も確保でき、[土地が]確実に生態系の働きを提供できる」と、Clean Air Task Force(CATF)脱炭素化化石エネルギー・プログラムのディレクター、Deepika Nagabhushan氏は、グローバルCCSインスティテュートが4月9日に開催したウェビナー「CCS Talks: California Policy and Climate Action Update(CCSトーク:カリフォルニア州の政策及び気候行動の最新状況)」の中で述べた。
そのような公益事業体は、「それら全ての基準を満たしながら、複数の排出源から一度にCO2を受け入れられる容量を持つ特定の貯留場所を設ける」ことを理想とする、と同氏は付け加えた。
ワシントンD.C.に拠点を持つグローバルCCSインスティテュートは、米国全土でCCUS技術を前進させるための運動を強化しているが、カリフォルニア州による最近の政策がプロジェクト開発者からの関心―主に、同州の低炭素燃料基準(LCFS)の下で有利な炭素削減クレジットを生み出せる可能性―の高まりを刺激していることから、焦点を同州に絞っている。
しかし、Nagabhushan氏によると、LCFSクレジットを生み出す見通しだけでCCUSプロジェクトに必要な資金を調達することにおいて、一部の企業は障害に直面しているという。「CATFは、LCFSプロトコルの下でCCUSプロジェクトを検討している開発者達にインタビューしているが、その経験から、LCFSインセンティブは資本集めに有効活用できず、クレジット価格の下限設定等の解決策が求められていることが分かった」と、同氏のウェビナーでのプレゼンテーション・スライドには記されている。
その結果、California Air Resources Board(カリフォルニア州大気資源局:CARB)は「プロジェクトがインセンティブを収益化できるようにLCFSの修正すべき部分を明らかにしなければならない」と、同氏は述べた。
カリフォルニア州の政策立案者もまた、CCUSが付設された発電所や水蒸気メタン改質とCCUSを利用して製造した水素について、供給される全ての小売電力を2045年までにゼロ炭素資源からのものにするという同州の長期的気候目標の達成を助けるためのゼロ炭素電源として定めることを検討しなければならないと、Nagabhushan氏は述べた。
他の専門家達が提言したように、Nagabhusan氏もまた、「現在、全排出量の85%を占める排出源からの排出量に対処するにあたってCCUSが役割を担えるよう」、CARBによるLCFSのCCUSプロトコルを同州のGHGキャップ・アンド・トレード制度に取り入れるべきだと述べた。
輸送燃料
カリフォルニア州の研究者達はまた、部門の電化のみについて調べるのではなく、「完全に脱炭素化された部門という文脈における、輸送燃料需給の研究とモデル化」を行いながら、「ゼロ炭素液体燃料」及びそれらを生産するにあたってのCCUSの役割についても検討しなければならないと、同氏は付け加えている。
CO2貯留公益事業体の見通しについて、Nagabhushan氏は、米国のいくつかの地域はこの概念の潜在的な実現の早期段階にあると述べた。
「現在進行中の取り組みについては承知している。Battelle(バテル記念研究所)が率いる取り組みが、ミシガン地域にあったと思う」と、同氏はウェビナー中に述べた。「また、メキシコ湾岸(Gulf Coast)地域でも沖合貯留のための取り組みが進められており、現在複数の調査が実施されている。」
加えて、CarbonSAFEと呼ばれる米国エネルギー省(Department of Energy:DOE)のプログラムが「米国南東部の調査を行っていると思う。そういうわけで、それらの貯留機会及び容量がどのぐらいになるか、そしてどの場所が便利かをより明確に特定する調査が複数行われている」と、同氏は述べた。
InsideEPA/climateとの貯留公益事業体のコンセプトに関するフォローアップ・インタビューにおいて、Nagabhushan氏は、「カリフォルニア州のローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)が主導する隔離についての特性調査に加えて、イリノイ-ミシガン盆地、メキシコ湾岸といった場所を含む米国全土で複数の特性調査が実施されている」と述べた。
「しかし、現時点においてこれらの努力はどれも、貯留公益事業体のアイディアによって動かされているものではない」と同氏は付け加えた。「地質学的特性は貯留公益事業体概念の重要な構成要素であるため、DOEはCarbonSAFEプログラムに対する投資を拡大し、もっと多くの特性調査を実施する必要があると、我々は考えている。」
さらに、公益事業体概念は「地質学だけに限ったことではなく、公益事業体の実際の『設立』を必要とする」とNagabhushan氏は付け加えた。「このアイディアは、コミュニティにおいて既に存在していた一方で、どこにおいても積極的には追求されて来なかった。本日のプレゼンテーションにおいて提言として指摘した意図は、CCSプロジェクトを迅速に普及させるために私が必要だと考えることのビジョンを描くためだ。我々は、このアイディアに対する関心を評価しようとしており、全般的には肯定的な関心が示されている。」
税控除指針
米国全土におけるCCUSプロジェクトの一般的な見通しについて、2018年初頭に米国議会が拡張した45Q連邦税控除の実施に関して以前に発行された指針を明確にする重要なIRS(米国内国歳入庁)ガイドラインをディベロッパーらが待っていると、Nagabhushan氏はウェビナーにおいて述べた。
このインセンティブは、石油増進回収(EOR)プロジェクトの一環として貯留されたCO21トン当たり35ドルの税控除を提供し、CO2の燃料、化学物質またはセメント等商品への転換といったその他のCO2有効利用に1トン当たり35ドルのインセンティブ、そしてEOR目的ではなく地中貯留されたCO2に1トン当たり50ドルの税控除を提供する。
「産業界は、いくつかの投資決定を行う前に、控除の戻し入れ計算やそれに係る責任等、追加的なトピックに関するいくつかのガイドラインをまだ待っているところだ」と同氏は述べた。「しかし、それにも拘わらず、いくつかのプロジェクトは既にそれぞれ様々な開発段階にあることが分かっている。しかし、それでも彼らは、自分達が負うことになる責任を明確にするため、米国財務省(U.S. Treasury)からの指針をまだ待っている。」
加えて、開発者達は、現在IRS指針が2024年1月1日と規定している、税控除を得るための建設開始要件を満たすにあたって壁に直面する可能性があると、Nagabhushan氏は述べた。「そしてそれは、事業を進めることに関心を持っているかもしれないある種のプロジェクトにとっては、それらのプロジェクトが大規模で、開発行程を辿るのに長い時間がかかるというだけで、ちょっとした問題となる。」
それでも、「よりシンプルなプロジェクトで開発及び建設にかかる時間が少ない」全国のエタノール製造プラントでのCCUS等、「この締め切り日に間に合う可能性のあるその他の機会も数多くある」と同氏は付け加えた。「従って、45Qを役立てようという関心は様々にあると思う。そして、特に45Q税控除をLCFSインセンティブと組み合わせた時、[中略]それはより幅広いチャンスを生み出すと考えている。」