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GCCSI INSIGHT: CCSは、欧州グリーン・ディールのどの部分で役割を担えるか?

12th June 2020

発行日:2020年6月12日

原典:グローバルCCSインスティテュート

 

ここ最近の展開を把握するため、インスティテュートは5月19日、欧州グリーン・ディール(European Green Deal)におけるCCSの役割に関するオンライン・イベント「CCSトーク」を開催しました。打ち解けた談話の中で、気候行動総局のディレクター(Director in DG Climate Action)であるArtur Runge-Metzger氏には、この件に関する欧州委員会の見解や最新ニュースについて共有いただき、続いて参加者からの質疑にお答えいただきました。ウェビナーの録画はインスティテュートのオーディオ・映像ライブラリーからご覧頂けます。

 

談話の主な結論3点:

 

  1. EUの2030年気候目標の見直しは、CCS技術がより早期に普及される必要性を意味する

 

気候行動総局(DG CLIMA)の見積りによると、次回の気候目標計画(Climate Target Plan)において2030年目標を50-55%に引き上げるということは、現行の40%削減目標では2035-2037年頃にならなければ達成出来ない正味ゼロ排出の軌道に、新たな2030年目標が乗っていることを意味します。これは、以前は2030年代後半に想定されていた排出削減活動を2030年代はじめに実施する必要が出て来ることを意味します。

 

利用方法のいくつかにおいて、プロセスが実証段階から大規模な商業展開に前進しているCCSのような成熟した技術は、より早く規模拡大されるのに適した位置づけとなっています。7月に予定されているEU ETS Innovation Fund(EU ETSイノベーション・ファンド)の第1ラウンドは、次の一連のCCSプロジェクトが欧州で立ち上がるのを助けることになるでしょう。

 

クリーン水素は脱炭素化を実現させるもう1つの技術であり、気候行動総局は、出来る限り多くの技術を利用出来るようにしておくことは有益なことであるため、グリーン及びブルー水素の双方をソリューションの一部と見なしています。様々な技術の規模拡大は、技術の費用と水素の価格に左右されます。クリーン水素に対する高まる需要により、水素インフラの段階的な強化がもたらされるにちがいありませんが、今後10年間においてバリューチェーン全体における大規模な投資が必要となるでしょう。

 

  1. EUは相当量のCO2削減が必要となる。炭素除去認証のための規制枠組に関する今後の作業は、この件に関する次の大仕事となる

 

EUの気候政策は、EU ETS、非ETS部門のためのEffort Sharing Regulation(努力分担規制:ESR)並びに土地利用・土地利用変化及び林業を対象とするLULUCF Regulation (LULUCF規制)というように、部門ごとの政策を通して構築されてきました。EU ETS及びESRの両方は、排出削減を実現するように設計されており、炭素除去にはインセンティブを与えていません。政策立案者及び利害関係者は、炭素除去の全ての側面について取り扱う既存の枠組がないことに気付き始めており、炭素除去にインセンティブを与えるよう、政策立案プロセスに働きかけています。しかし、2050年までに気候中立を、それ以降にはネガティブ・エミッションを達成するためには、相当量の炭素除去が必要となります。

 

この欠如している要素に対処するため、欧州委員会は2023年までに炭素除去を認証するための規制枠組を提案する予定です。これは、新しいCircular Economy Action Plan(循環型経済行動計画)における主要行動の1つとして挙げられており、炭素除去の信頼性を監視し、立証する強固で透明性の高い炭素アカウンティングを実現させることが目指されています。気候行動総局が強調するように、この取り組みでは、例えばクリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)等、過去に得られた経験を見直すことになります。

 

これは、将来的には成功談の1つとなる可能性もあります。すなわち、適切な炭素除去認証枠組を構築することが出来れば、EUは主導的立場に立ち、他国が追従できる模範を示すことが出来ます。様々な炭素除去オプションの可能性及び恒久性に係る疑問も、パリ協定目標を達成するという文脈の下で国際的に広く議論されています。

 

その一方で、欧州グリーン・ディールの下で炭素除去を規制するために、研究者たちは既に、政策設計に目を向け、解決策を提示しています。アカウンティング規則を含む枠組が制定されれば、確かに政策設計に関する問題は浮上して来るでしょう。2050年までの気候中立目標案は国内及びEU全体を対象としているため、一部の国は他の国よりも多くのネガティブ・エミッションを実現する可能性が高くなります。CCSは、バイオエネルギーCCS(BECCS)及びCCSと組み合わせた直接空気回収(DACCS)によって、ネガティブ・エミッションを実現する技術的ソリューションの1つとなるでしょう。

 

3. EU ETSにパイプライン以外でのCO2輸送を含めるソリューションが考案されている

 

現行法の障壁の1つは、CO2がパイプライン経由で輸送されるプロジェクトのみがEU ETSの炭素価格によって利益を得られるという事実です。貯留するためにCO2を、例えば船舶やトラック等、パイプライン以外の手段で輸送することを計画している施設は、回収したCO2についても排出分として支払わなければなりません。その好例がCO2を船舶輸送するノルウェーのフルスケール・プロジェクトです。

 

Runge-Metzger氏は先月(5月)、欧州委員会がCO2の船舶輸送を含める可能性について法的に明確にするよう要求されており、法的枠組の中でその可能性を検討していることを追認されました。進行中の議論が間もなくこの要求に答えを出すと伺えて、頼もしい限りです。

 

2050年までに気候中立を実現する復興の資金調達

 

世界のCO2排出量は、COVID-19危機の影響により10年前のレベルである8%減となると、IEAは推計しています。数か月にわたる飛行や通勤の減少による大きな行動変化は、パリ協定の目標を達成するのに必要な量に相当する年間排出削減を実現すると見込まれています。UNEPの排出ギャップ報告書2019(Emissions Gap Report 2019)によると、1.5°C目標を達成するためには、2020~2030年において排出量を毎年7.6%低減させなければなりません(2°C目標の場合は毎年2.7%)。これらの数字は、持続的な排出削減及びネガティブ・エミッションを実現し、復興プログラムをそれに合わせるために、利用可能な全てのソリューション及び技術をもう一度真剣に検討する必要があることを明らかにしています。

 

5月最終週、欧州委員会は重要な復興計画案である「Next Generation EU(次世代のEU)」を発表しました。この計画を支援する他の手段の中でも、InvestEU投資プログラムは改良され、また、新しいStrategic Investment Facility(戦略的投資ファシリティ)が組み込まれます。提案には、環境に優しい移行において戦略的な重要性を持つグリーンな技術の下にクリーン水素及びCCSが含められています。

 

Just Transition Fund(公正な移行基金)の修正案は、規模を75億ユーロから400億ユーロに拡大しています。ETS対象施設(鉄鋼、セメント製造等)は、CCS等を通した大幅な排出削減に対する支援を受けられるようになります。ただし、これらは全て、EU加盟国によって作成された公正な移行計画の中で指定されている最も影響を受ける地域に施設が位置している場合に限ります。

 

次のステップ

 

6月頭、2030年気候目標計画、欧州横断エネルギー・インフラのガイドライン(TEN-E Regulation(TEN-E規則))の見直し、EU Hydrogen Strategy(EU水素戦略)のロードマップ、EU Smart Sector Integration Strategy (EUスマート部門統合戦略)のロードマップ、及び新たな持続可能な資金調達戦略に関する協議など、欧州委員会による複数のイニシアティブ及び協議について利害関係者らがフィードバックを提供する機会がありました。

 

インスティテュートは、2050年までに気候中立目標を達成するにあたってのCCSの役割に関係する欧州政策プロセスについて、今後も継続的に進捗情報を提供して行きます。

 

この記事は、インスティテュート国際気候変動政策担当上級アドバイザー(Senior Advisor for International Climate Change Policy)Eve Tammeによって執筆されました。

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