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インサイト: CCS普及の課題、実現要因、及び機会

31st July 2020

このように一般の人々の誤解と商業的課題があるにもかかわらず、具体的な政策と商業的機会によってCCS投資の成功が実現してきた状況があります。運転中ないし建設中にあるCCS施設は24件ありますが、これらはいずれも前向きな金融投資決定が行われてきたものです。

 

第一の実現要因は、高濃度のCO2 ガス流と、評価に必要なデータの得られる高品質な CO2 地中貯留資源へのアクセスです。このような状況が揃うことにより、回収、貯留サイト評価、CO2 輸送、CO2 貯留事業に関わるコストが低減されます。

 

第二の実現要因は、確実に利益を生む重要な収入源です。運転中ないし建設中にある18件の 既存CCS施設 は、CO2 を石油増進回収用(EOR) 用に販売あるいは利用していますが、そうすることによって、長期的で確実な収入源が生み出されます。米国では、内国歳入法セクション45Q のもとで出される税控除が、2011年以降同国で操業開始した6件のCCS施設における重要な実現要因となってきました。税控除に適格となる複数の新プロジェクトが、現在調査を通して進展中です。

 

炭素価格付けによっても、CCSの商業化を支援することができます。1991年にノルウェー で導入された炭素税は、 Sleipner(スレイプナー)とSnØhvit(スノービット)の両CCSプロジェクトの開発にインセンティブを与えました。 規制は、一定レベルを超える排出を禁止することによって、CCSへの投資にインセンティブを与える役割を果たしてきました。 Chevron社は、豪州の自社Gorgon LNGプロジェクトからのCO2 排出を削減する必要性を認識し、その環境影響報告書にCCSを含めました。 西オーストラリア州政府による同プロジェクトの承認には、その後、ガス処理事業により発生するガス田CO2 80%以上を圧入するという必須条件が盛り込まれました。

 

カナダ・サスカチュワン州において2011年に発電の排出性能基準が導入されたことは、Boundary Dam CCS施設の開発における推進要因となりました。CCSが無ければ、Boundary Damの石炭ユニットは閉鎖し、天然ガス複合サイクル・プラントに差し替えることを要求されていたでしょう。当時、ガス価格が上昇し、より変動的になることが予想されていたため、同石炭ユニットのCCS付設改修がNPVが最高となるオプションとなったのです。

 

第三の実現要因は、CO2地中貯留のための孔隙へのアクセスに関する透明で予測可能な規制です。投資家は、自らが地中貯留資源を開発する権利を確保し、CO2 貯留事業に関わる遵守リスクを管理できるということを確信している必要があります。さらに、政府にとっては、明確な特徴を持つ法規制枠組 を実施し、貯留されたCO2 に対する事業者の潜在的責任を明確にすることが重要です。豪州政府が実施した枠組は一つの優れた例であり、そこでは、貯留事業者がプロジェクトの運営期間と閉鎖後の特定の期間、短期的な責任のリスクを負います。

 

第四の実現要因は、 支援的な政府です。政府は必要に応じ、特定のプロジェクトに対し、資本費補助、運営助成金、譲与的条件貸付の形で資金支援を提供することができます。政府はまた、CO2輸送・貯留インフラへの最初の投資家になることにより、規模の経済を通してCO輸送・貯留のコストを大幅に低減するCCSハブの設置を支援することも可能です。

 

また、政府には、気候目標達成におけるCCSの必要性について一般の人々の信頼と理解を構築するという点で果たすべき重要な役割があります。 英国の気候変動委員会(Committee on Climate Change)は、英国が2050年までにどのように正味ゼロ排出を達成しうるかについて述べたその  20195月の報告書 の中で、優れた例を示しています。同委員会の分析は、産業、発電、水素製造からの排出量を緩和するために、CCSなど、可能性を持ったあらゆる低排出・省エネ技術が必要であること実証しています。2050年に179MtCO2 が英国で回収・貯留されなくてはならないとされていることは重要です。

 

最後に、CCS普及が必要な規模に到達するためには、CCS投資の短期的な機会について検討することが重要です。ほとんどの機会では、以下の属性が実証されています。

 

·       天然ガス処理、精製、水素製造、様々な化学的処理など、比較的CO2 濃度の高いガス流が存在すること。

·       比較的近距離(500km以内)に高品質な地中貯留資源があって、通常石油・ガス開発目的で収集される地中データが存在すること。

·        CO2回収貯留に対して、収益になる金銭的報酬があること。

·        CO2 貯留と、貯留されたCO2の長期責任に対する商業的に許容可能な管理に関する透明で予測可能な規制があること。

·       排出削減約束達成におけるCCSの役割について理解している、積極的な支援的政府の存在。

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