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インサイト&コメンタリー: 米国データセンターの脱炭素化におけるCCSの役割

18th March 2025

発行日:2025年3月18日

原典:グローバルCCSインスティテュート

 

人工知能(AI)技術の採用による効率向上は、ビジネス・インテリジェンス、医療、教育から手元のスマートフォンのアプリに至るまで、米国経済の幅広い部門への浸透を促進しています。AI技術を支える計算能力は、データセンター、すなわちアプリケーションの実行、データ・ストレージ及び増加傾向にあるクラウド・コンピューティング・サービスのためのITインフラを収容する建物ないし施設にあります。

AIと結び付いたデータセンターの1つのタイプは、ハイパースケール・データセンターと呼ばれます。ハイパースケール・データセンターは、その拡張性や分散型高性能処理から、時に「ハイパースケーラー」と呼ばれます(IBM社、2024年)。大手技術企業は、AI技術の成熟に伴い、ハイパースケール・データセンターに巨額の投資を行っています。1月、Microsoft社は、AI対応データセンターを建設するため、2025年度に800億米ドル投資する計画を発表しました(Smith、2025年)。Apple社も、Apple Intelligenceインフラを支える新規及び既存のデータセンターに、今後4年間で米国において5,000億米ドル投資する予定です(Apple社、2025年)。

AI駆動データセンターの需要は、将来の推計電力消費量を増加させています。データセンターは、全世界で2022年に460テラワット時(TWh)消費したと推計されており、2026年には1,000TWhを超過する可能性があります(IEA、2024年)。参考までに、米国最大の都市公益事業体である米国カリフォルニア州ロサンゼルス水道電力局(Los Angeles Department of Water and Power)は、2022~23年度、顧客に対し21.6TWh供給しましたが、それは世界のデータセンターによる同年の消費量のわずか20分の1でしかありません(LADWP、2024年)。

米国電力研究所(Electric Power Research Institute:EPRI)の推計によると、米国だけでも、データセンターは2030年の電力消費量の4.6%~9.1%を占める可能性があります(図1、EPRI、2024年)。米国エネルギー省(US Department of Energy)も、別の調査で同様の結果を得ており、データセンターは2028年の電力消費量の6.7~12%を占めることになると推計しています(Shehabi他、2024年)。

 

図1-2023~2030年における米国データセンターの潜在的電力消費量の予測(EPRI、2024年)

 

データセンターは、年中無休で電力が必要であり、一般的には自治体の電力網ないし自家発電設備から供給されています。しかし、データセンターにおける停電はデータの損失、サービスの中断、あるいは金銭的な損失につながる可能性があることから、しばしばディーゼルを燃料とした発電機がバックアップ電源として使用されています(Youssef、2020年)。ディーゼル発電機は、地域の大気質に影響を与える窒素酸化物及び粒子状物質を排出することから、米国では連邦法及び地方法がその使用を規制しています。ディーゼル発電機はまた、二酸化炭素(CO2)も排出します。

 

データセンターの脱炭素化技術としてのCCS

 

データセンターの電力消費によるCO2排出量は大量になる可能性があり、2023年に米国では、176TWhに相当する610億キログラムのCO2が排出されたと推計されています(Shehabi他、2024年)。この事実は、Amazon社、Google社、Meta社及びMicrosoft社といった企業にも通じるものです。これら4社は、2024年にクリーン電力を購入した米国最大の企業であり、合計で19ギガワット(GW)ないし企業による電力購入契約の合計の68%を占めます(BloombergNEF社及びBCSE、2025年)。

CCSは、多用途な技術である上、発電施設のCO2排出量の90~95%以上を回収する潜在力を持つことから、データセンターの脱炭素化を実現させる可能性があります(Barlow、Shahi及びKearns、2025年)。データセンターの安定した、信頼性の高い電力への需要に応えながらCO2排出量を最小化するため、ビハインド・ザ・メーターの(自治体の電力網に接続されていない)専用発電施設にCCSを適用するビジネス・モデルが浮上してきています。このモデルでは、天然ガスタービンから排出されるCO2が大気中に放出される前に回収され、輸送された後に恒久的に貯留されることから、データセンターの電源は、大幅に脱炭素化されます。

産業界は、米国内外におけるデータセンターの脱炭素化機会に反応しています。2024年12月、ExxonMobil社は、データセンター用に、関連するCO2排出量を90%以上回収・除去する1.5GW超規模のCCS付設型天然ガス発電施設を建設する計画を発表しました(ExxonMobil社、2024年)。1月には、Chevron社及びそのパートナーであるEngine No. 1社が、当初ビハインド・ザ・メーター・ソリューションとして設計された、最大4GWの発電装置を併設したデータセンターを開発する同様の取り組みを発表しており、同じく90%以上の回収率を持つCCSを組み込む柔軟性を備えています(Chevron社、2025年)。3月には、Frontier Infrastructure社及びBaker Hughes社が、米国ワイオミング州にあるスウィートウォーターCO2貯留ハブ(Sweetwater Carbon Storage Hub)の貯留資源を利用し、データセンター・プロジェクト向けに256メガワット規模のビハインド・ザ・メーターのCCS付設型ガス火力発電所を開発する計画を発表しました(Frontier社、2025年)。

同様の傾向は欧州でも見られ、2月には、Eni社がアラブ首長国連邦(UAE)に拠点を置くMGX社及びG42社と、最大1GWの「ブルー電力」をイタリアのデータセンターに供給する協業契約を締結しました。「ブルー電力」とは、天然ガス発電を行い、排出されるCO2を回収・貯留する施設を指しますが、このケースでは、CO2はイタリアのラヴェンナ(Ravenna)CCSハブに貯留されます(Eni社、2025年)。

天然ガスタービンの主要な製造業者であるGE Vernova社も、CCSを利用したデータセンターの脱炭素化に前向きです。12月に行われた同社の投資家アップデートでガス発電について質問された際、GE Vernova社CEOのScott Strazik氏は投資家達に対し、米国テキサス州及びルイジアナ州等、相当なCO2貯留資源がある場所では、データセンターのガス発電所にCO2回収を付設する「経済的な道」があると述べました(GE Vernova社、2024年)。同氏はまた、GE Vernova社のタービンが、英国のネットゼロ・ティーズサイド(Net Zero Teesside)プロジェクトでCCSと共に使用されることを指摘しました。

 

CCSは拡張可能なソリューション

 

ギワガット規模の低排出電力を供給する選択肢は限られています。原子力、地熱及び蓄電池付き再生可能エネルギーといった技術は、素晴らしいエネルギー・ソリューションとなり得ますが、全てのケースで費用競争力があるとは限らず、容易に拡張できるとも限りません。CCSが適用された天然ガス発電(「NG + CCS」)が低炭素ないしゼロカーボン電源オプションの中で際立っているのは、この点です。BloombergNEF社及び米国持続可能なエネルギーのための経済人会議(Business Council for Sustainable Energy)の推計によると、NG + CCSは、出力調整可能な発電ないし常時の発電において均等化発電原価(LCOE)が最低レベルであり、CCSと組み合わせた石炭、水素ガスタービンないし原子力よりも低いことを示しています(BloombergNEF社及びBCSE、2025年)。

さらに、米国は天然ガスの主要な生産国であることから、燃料を重要な制約条件から外すことができます。また米国には、高めの推計で21兆トン(21,000ギガトン(Gt))以上のCO2貯留資源があり、その多くはテキサス州及びカリフォルニア州といった、データセンターの需要が高いところに位置していることから、NG + CCSは、データセンターの電源として即座にでも導入可能かつ拡張可能なソリューションとなります(US DOE/NETL、2015年;US EIA、2025年)。

 

米国のデータセンターにおけるCCS適用の前途

 

データセンター市場がNG + CCS電力ソリューションを採用するためには、政策と経済的要因の適切な組み合わせが整っているか、それを作り出す必要があります。データセンターのデベロッパーは、天然ガスの供給、利用可能性及び費用、回収装置、CO2輸送インフラ、CO2貯留資源、許可のスケジュール及び複雑さ、並びにCO2の貯留ないし利用のための45Q税控除といった税制優遇措置のバランスを取らなければなりません。

現在、企業は、データセンターの点源から回収され、含塩層に貯留されたCO2について1トン当たり85ドル、回収されたCO2を有用な製品(燃料、化学物質、建築材料等)に転換するか、石油増進回収事業に利用した場合について1トン当たり60ドルの控除を受けることができます。しかし、2022年にこれらの金額が設定されて以来、高いインフレが45Q税控除の価値を低下させています。炭素回収連合(Carbon Capture Coalition)は、45Q税控除を強化するよう米国議会に呼びかけており、それには、控除額のインフレ調整(2021年を基準年として使用)、CO2利用に対する税控除の同等性の導入、全納税者に対する直接支払いオプションの拡大及びCCSへの投資の確実性を確保することを目的としたその他の強化策が含まれます。

それでもなお、産業界のAIに対する緊急性と、温室効果ガス排出量を削減したいという持続的な願望は、NG + CCSの汎用性及び拡張性と相俟って、同技術をデータセンターの脱炭素化のための競争力のある電力ソリューションにし続けると見られています。

 

 

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