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インサイト&コメンタリー:米州フォーラム、CCS拡大に不可欠な政策、技術及び提携について探る
14th May 2025
トピック: Institute News
発行日:2025年4月29日
米国ワシントンD.C.にあるカナダ大使館で2025年4月8日に開催されたCCSに関する米州フォーラム(Americas Forum on Carbon Capture and Storage)では、産官学及び市民社会のリーダー達が一堂に会し、同地域全体におけるCCS展開の推進に関する集中的な対話を1日かけて行いました。同フォーラムは、10年以上にわたって米州のCCSの主要な政策イベントとして機能しており、世界的な気候目標を支援するために、この極めて重要な技術を拡大するにあたって不可欠な政策、技術及び提携について探るプラットフォームを提供してきました。CCSの世界的なリーダーと認識されているカナダ大使館と協力して開催された今年のフォーラムでは、ビジネスモデル及び資金調達、技術革新並びに地域の政策の進捗に関する専門家パネル・ディスカッション及びプレゼンテーションが行われました。
世界的なCCSの機運:議論の場の設定
グローバルCCSインスティテュートのCEOであるJarad Daniels(写真)は、開会の挨拶に代えて、世界的なCCSの進捗状況の全体像を示しました。操業中のプロジェクト65件と建設中のプロジェクト42件を紹介し、Langskip(ノルウェー)、Porthos(オランダ)、ジュバイル・ハブ(Jubail Hub)(サウジアラビア)、Shepherd CCS(韓国-マレーシア)、ルイジアナ州CDRハブ(Louisiana CDR Hub)(米国)といった主要な国際イニシアティブを、加速する機運の手本として挙げました。Danielsは、政府や企業がどのように野心から具体的な行動へと前進しているかを概説し、注目すべきマイルストーンとしてOxy Low Carbon Ventures社に対する米国テキサス州での米国クラスVI許可の発行や、Northern Lights拡張プロジェクト及びStockholm Exergi社における最終投資決定(FIDs)等を挙げました。

セッションの最後には国際協力に焦点を当て、Danielsは、インスティテュートのカーボンマネジメント・チャレンジ(Carbon Management Challenge)の事務局としての役割や、CCSを拡大する上で必要な官民提携を促進するためのインスティテュートの政府、州、産業界との継続的な取り組みについて強調しました。
未来を支える力:データセンターの脱炭素化
データセンターの脱炭素化に関するパネルは、増大する同部門のエネルギー需要について議論しました。Bloom Energy社による2025年データセンター電力(2025 Data Center Power)報告書は、今後5年間で、現在の25GWを上回る、55GWのデータセンター能力が新たに追加されることを予測しています。データセンターのリーダー達は、エネルギー需要に対処するためにより積極的な役割を担っており、サイトの約30%は、2030年までに自家発電を主要なエネルギー源とする見込みです。パネリストは、ソリューション・ミックスの一部としてCCSについて議論し、インフラへの近さや安定した送電網の必要性を強調すると同時に、政策の確実性の重要さも指摘しました。議論は、データセンターの需要を満たす新たな低炭素ベースロード発電を可能にすることに焦点を当てると共に、許可付与、相互接続及び老朽化した発電設備からの移行に関する課題についても取り上げました。
革新的なビジネスモデル:カナダにおけるCCSの加速
カナダにおけるCCSビジネスモデルに特化したセッションは、プロジェクトの先行リスクを吸収し、民間投資を呼び込むように設計された150億カナダ・ドル規模の独立公的基金であるカナダ成長基金(Canada Growth Fund:CGF)に焦点を当てました。CGFは、先行リスク並びに技術の開発と展開への投資を吸収する能力を提供するものです。同基金は、Svante Technologies社や、Varme Energy社及びGibson Energy社との提携の下、カナダ・アルバータ州エドモントン(Edmonton)市が実施する廃棄物発電施設等の早期プロジェクトを支援しています。パネリストは、CGFが、炭素クレジットの長期的なオフテイク契約を促進することを通じて、どのように競争力のあるCCSプロジェクトの規模を拡大させているかについて議論しました。カナダのパルプ・製紙部門もまた、その脱炭素化戦略の一環として炭素クレジットによる収入の流れを検討していることから、注目を集めました。
州レベルのリーダーシップ:米国全土における進捗
米国アラバマ州、カリフォルニア州、コロラド州、ウェストバージニア州及びワイオミング州の州地質学者及び規制当局のリーダー達から成るパネルは、州レベルにおけるCCSの進捗の詳細を紹介しました。主要な州における立法の機運が、特に間隙の所有権、責任の移転、長期的管理といった分野におけるCCSイニシアティブを後押ししています。いくつかの州は、積極的にクラスVIプライマシーを追求しており、アラバマ州及びコロラド州は申請前段階にあり、ワイオミング州(2020年承認)及びウェストバージニア州(2025年3月発効)は確保済みです。これらの進展は、米国全土において許可付与を合理化し、プロジェクトのスケジュールを早めています。
政策を通じて世界的なCCS展開を可能にする
CCS展開を可能にする政策に焦点を当てたパネルでは、米国、カナダ及びブラジルの代表者が各国のCCS支援アプローチについて洞察を共有しました。国によって進み具合は異なるものの、パネルは、市場及び規制面における不確実性が続く中でも、慎重な楽観論を示しました。
特にエタノール、アンモニア及び天然ガス処理といった部門における45Q税控除(米国)等、政策手段の重要性も議論されました。インフレがその実質的価値を減じているものの、パネルは、45Q税控除がCCS展開の推進にとって重要であり続けていることを指摘しました。議論は、進化する自主的な炭素市場やCO2除去(CDR)技術の台頭、越境炭素取引を支援しプロジェクトの経済性を強化する6条メカニズムの可能性にも触れました。
閉会にあたっての考察:規模拡大のための協力
カナダ・アルバータ州排出削減機構(Emissions Reduction Alberta)のCEOであるJustin Riemer氏は、継続的な革新及び国境を越えた協力の必要性を強調しつつフォーラムを閉会しました。同氏は、エネルギー安全保障及び経済競争力を脱炭素化目標と調和させる重要性を明確にし、CCUSバリューチェーンにおける「利用(utilisation)」の役割を強調しました。Riemer氏はまた、CCSプロジェクト計画における水戦略の重要性を指摘し、エネルギー効率を改善し、費用を削減するため、次世代回収技術への投資増を呼び掛けました。
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2025年米州フォーラムは、CCSが大規模展開の重要な局面を迎えていることを再確認しました。世界的なリーダーシップから州レベルのイニシアティブや産業革新まで、この日の議論は、CCSを大規模に推進するために政策、技術及び協力がどのように結び付いているかを示しました。フォーラムは、CCSを前進させる上で米州が極めて重要な役割を担っており、機運は部門や国境を越えて高まっていることを強調しました。
CCSに関する最新情報を継続的に入手し、この分野の世界的なリーダーと交流するには、当インスティテュートが開催する今後のイベントにご参加ください。