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インサイト&コメンタリー: Gidden他による「A Prudent Planetary Limit for Geologic Carbon Storage」に対する意見

5th September 2025

トピック: Institute News

発行日:2025年9月5日

原典:グローバルCCSインスティテュート

 

グローバルCCSインスティテュートは、Gidden他による最近のスタディ「CO2地中貯留の慎重な地球規模上限(A prudent planetary limit for geologic carbon storage)」を受けてNature誌に提出した書簡を共有いたします。

 

本書簡は、世界各地のCCSプロジェクトから得た運用経験に基づき、同スタディの結果に対する専門家の見解を提示しており、大規模なCCS展開の緊急性を浮き彫りにすると共に、世界的な気候目標の達成には、時宜を得た行動が極めて重要であることを強調しています。

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Nature誌で発表されたGidden他による最近のスタディ(「CO2地中貯留の慎重な地球規模上限(A prudent planetary limit for geologic carbon storage)」)は、世界CO2貯留容量の時宜を得た再評価を示しており、早急な展開が至急必要であることを強調しています。同スタディが示す1,460 GtCO2という控えめな推定貯留容量は、これまでのいくつかの評価よりも少ないものの、IPCCの結論とほぼ一致しており、地球温暖化の抑制においてCCSが重要な役割を果たすために十分以上の地中貯留地が依然として存在することを確認しています。スタディの結果は、たとえ制限的な仮定下であっても、CCSは温暖化を0.7°C低減することが可能であることを示しており、特にセメント、鉄鋼、化学といった排出削減が困難な産業部門においては、拡張可能な代替手段が依然として限られていることから、今後も同技術が必要であることを証明しています。

インスティテュートは、スタディの主要な結論のいくつかには同意するものの、その方法論は、CCSプロジェクトのリスク及び技術的パラメーターについて過度に制限的な仮定を適用しています。事実、それらの仮定のいくつかは、現実世界における運用やプロジェクトの経験と矛盾しています。例えば、スタディが示す地中貯留における2,500メートルの深度制限は、深度2,600メートルで操業しているNorthern Lights等プロジェクトの成功を無視しており、300メートルの海洋深度制限は、ブラジルにおける10年間に及ぶ水深2,000メートルでのCO2圧入経験を見落としています。スタディにおける人口密集地域周辺25kmの緩衝地帯も、運用経験と比較すると保守的な設定に見受けられ、代表的な許可アプローチとも一致していません。CarbFixプロジェクトは人口密集地域から8km、Shell社Questプロジェクトは15kmの地点でそれぞれ操業しています。既存のプロジェクトは、厳格な許可手続き及びリスク評価を通じて、高い安全基準を実際に満たすことができることを実証しています。

インスティテュートは、同研究が地中貯留について、戦略的な管理を必要とする有限の世代間資源であると正しく位置付けている点について、概ね同意します。これは、電化できない産業点源や恒久的炭素除去技術等、重要用途におけるCCSの優先的実施を支持するものです。重要な問いは、十分な貯留容量が存在するかどうかではなく、それをどのぐらいの速さで大規模に有効活用できるかです。

絶対に必要なことは、直ちに行動を起こすことです。CCSの実施を遅らせることは、短期的な気候目標の達成を危うくさせるだけでなく、気候目標の達成に必要な将来の貯留要件と操業上の複雑さを増大させることになります。このスタディは、実施を1年遅らせるごとに、気候目標の達成の困難さと費用が増大することを強調しています。

この研究は、CCSに関する野心を抑制するのではなく、2030年までに1GtCO2という重要な貯留目標を達成するための取り組みを活気付けるべきです。早期展開は、将来の容量予測を精緻化し、安全で長期的な貯留事業のために不可欠であるしっかりした法的及び規制的枠組を整備するために必要な運用データを得ることにつながります。効果的な気候行動の機会は狭まりつつあり、CCS展開は、ネットゼロの未来を達成するために依然として不可欠です。

 

 

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