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GCCSI最新ニュース:要約:インスティテュート、MENA気候週間2023(MENA Climate Week 2023)に参加、同地域におけるCCSの価値を強調
16th November 2023
トピック: Institute News
発行日:2023年11月16日
低炭素社会への移行が世界的に勢いを増す中、CCSの必要性は、中東及び北アフリカ地域(Middle East and North African Region:MENA)を含む産業密集地域においてますます明白になってきています。去る10月、気候にかかわる利害関係者達は、UNFCCCのMENA気候週間2023(MENA Climate Week 2023:MENA CW)に参加するため、サウジアラビア・リヤド(Riyadh)に集まり、それぞれの専門知識を提供し、見識を深め、CCSを含む、同地域にとって重要な気候ソリューションに関する議論に参加しました。
MENA 気候週間(MENA CW)2023におけるCCSに関する重要点
CCSは、MENAの幅広い大量排出産業から、脱炭素化計画を支援するものとして見られています。サウジアラビアでは、エネルギー省(Ministry of Energy)が同国の気候行動ポートフォリオに同技術を含めることを公約しており、最近では2035年までに年間4,400万トンのCO2を回収するCCSクラスターを、同国のジュバイル(Jubail)工業地帯に開発する意向を発表しました。
グローバルCCSインスティテュート、CEM CCUSイニシアティブ(CEM CCUS Initiative)、クリーン・エア・タスク・フォース(Clean Air Task Force)及びKAPSARCとの緊密なパートナーシップの下で開催された、セメント及び鉄鋼におけるCCS利用に焦点を当てたサイドイベントでは、City Cement社CEOのMajed Abdul Rahman Bin Nasser Al Osailan氏が、ネットゼロへの道における同技術の不可欠な役割を繰り返し述べ、産業による迅速な低炭素社会への移行には、その道のりにおいてCCSを含める必要が出てくると強調しました。COP28議長国の上級大量排出専門家(Senior Heavy Emitting Specialist)であるRahma Alshamsi氏はこれらの意見に同調し、しばしば「排出削減が困難な(hard-to-abate)」と形容される産業に対する認識は、少なくとも気候ソリューション及び技術的な観点からは誤解を招きかねないと指摘しました。50年前から利用されているCCSは、排出量削減能力が実証されています。CCSの価値を十分に活用するためには、更なる投資を可能にする政策的及び規制的支援の整備と共に、費用の問題に取り組む必要があります。
MENA CWでのCCSを巡る議論は楽観論が主流でしたが、専門家は今後の普及に関する課題にも言及しました。産業規模のCCSプロジェクトは、プロジェクトの長期的な採算性を念頭に置いたビジネスケースを作ることを必要とするため、長期的な収益機会、プロジェクトを可能にする政策、並びに対象を定めた利害関係者との関係構築及びフィードバックの全てがこの取り組みに含まれる要素となります。資金調達に関する炉辺談話では、HSBC社の持続可能なファイナンス・センター長(Managing Director of the Centre of Sustainable Finance)であるZoe Knight氏が、CCSは既に金融部門に認識されていることを指摘し、支援政策の信頼性が金融部門による更なる支援を推進すると述べました。
この点についてMENA CWで英国の視点を示したのは、英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(Department for Energy Security and Net Zero)のエネルギーCCUS担当副長官(Deputy Director for Energy of CCUS)であるChris Thackery氏でした。英国は、CCSを長期的に拡大していくために必要な政策的基盤を敷くという重要なコミットメントを明確に示しています。このことは、国家CCUSインフラ基金(CCUS Infrastructure Fund)を設立するための10億ポンド規模の資金提供コミットメントや、国内におけるCCSを長期的に推進するために春季予算(Spring Budget)で更に200億ポンドを割り当てていることを通して示されています。CCUSプロジェクトを成功させるにはビジネス・モデルが鍵となると、Thackery氏は指摘しました。今のところ、英国は包括的なビジネス・モデルを作成しており、電力から廃棄物まで、様々な部門の微妙に異なる機会や、CCSバリューチェーンの様々な部分が時間と共にどのように進化していくかを浮き彫りにしています。
MENA CWにおける国際努力及び国家CCSコミットメント
MENA CW期間中を含む、UNFCCCの地域気候週間(Regional Climate Week)での話し合いは、COPで世界初のグローバル・ストックテイク(GST)を形作るのに役立ち、それはその後、国が決定する貢献(Nationally Determined Contributions)に情報を与えることになります。環境NGO、政府代表者及び産業界のリーダーがMENA CWで積極的にCCS対話に貢献することは、CCSがGSTにおいてどの程度評価されるかに反映されることになります。
前途有望なことに、CCSに資源を投入し、キャパシティ・ビルディングを強化し、知識共有を支援するという各国政府による宣言には事欠きませんでした。MENA CW期間中、エネルギー省が代表するサウジアラビア政府は、グローバルCCSインスティテュートの最新政府メンバーとなることを発表しました。同国が2060年までにネットゼロを達成するという目標を掲げる中で、この加盟は、協力、革新及び実証済み技術の採用を通して気候問題に取り組むという同国のコミットメントを再確認するものです。
今後について
MENA CWは、まだ2年目であるにもかかわらず、既にCCSを含む気候に関する極めて重要な話し合いの場としてしっかりと確立しています。COP28が着々と近づいてくる中、パリ協定の目標を達成するためには、学んだことを国際舞台で実行に移すことが重要になってきます。MENA CW 2023の産業界及び政策リーダー並びに参加者は、そのコミットメントを実証しており、インスティテュートは、MENAの内外で積極的にその専門知識を提供し、キャパシティ・ビルディングを推進することで、CCSの普及を加速化させるという使命を果たしていきます。