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インサイト&コメンタリー:米州におけるCCS:地域の概観 2024年CCSに関する政策的、法的及び規制的総括
4th December 2024
トピック: Institute News
発行日:2024年12月4日
米州地域には、米国、カナダ及びブラジルという、CCSに関連した活発な進展がみられる3つの主要国があります。北米は、CCSの最も成熟した政策的及び規制的環境の1つであり、この分野における開発の歴史は20年に及びます。米国及びカナダは、同技術の大規模展開に対する投資家の信頼と支援を確保するため、政策、法律及び規制を継続的に改善及び調整する段階にあります。
ブラジルは、南米におけるCCSのリーダーとしての地位を確立し始めており、南米大陸の他の国々に模範を示しています。ブラジルは、未来の燃料法案(Fuels of the Future Bill)528/2020を可決するという大きな節目を達成し、地中貯留サイトのオペレーターの義務を定めました。
この地域分析は、これらの主要国における進展及び課題を詳しく探っています。
米国:CCS政策及びインフラの草分け
米国は、CCSの世界的リーダーとしての地位を確立しており、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を2005年比で50%~52%削減するという同国の「国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution:NDC)」を達成するための戦略において、同技術が極めて重要な構成要素となっています。この目標は、下記を含む重要な政策介入によって支えられています。
- 45Q税額控除:2022年の米国インフレ抑制法(Inflation Reduction Act:IRA)でCCSプロジェクトに対する税額控除額が引き上げられた。下表参照。
- インフラ投資:2021年米国インフラ投資・雇用法(2021 Infrastructure Investment and Jobs Act)(米国超党派インフラ法(Bipartisan Infrastructure Law:BIL))が補助金、融資及び保証を通じてCCSへの投資を促進した。
これら2つの法律並びに財政支援及び公的資金支援の約束は、大規模CCSイニシアティブへの投資に必要な金融面での確実性を民間部門に与えることから、新規プロジェクトの発表が相次いでいます。
米国はまた、強力な制度的支援や、何十年にもわたるCCS技術の研究開発努力及びプロジェクトを支援する地域パートナーシップを通じて、早期からCCS産業への投資を可能にすることで恩恵を受けています。例としては、地域炭素隔離パートナーシップ(Regional Carbon Sequestration Partnerships:RCSPs)及びCarbonSAFEプログラムが挙げられます。将来的な政策支援は、この地位をさらに強化し、より多くの業界参加者がCCSに投資することを可能にしました。

表:2022年米国インフレ抑制法による45Q税額控除額の引き上げ
クラスVIプライマシー:州への権限付与
米国における政策や規制の策定に対する機運は州にも及んでいます。米国環境保護庁(Environmental Protection Agency:EPA)は、地下圧入管理(Underground Injection Control:UIC)プログラムを監督しますが、州は同プログラムを地元で管理する権限を付与するクラスVIプライマシーを申請する選択肢を有しています。
ノースダコタ州、ワイオミング州及びルイジアナ州は、既にクラスVIプライマシーを確保している一方で、テキサス、アリゾナ及びウェストバージニアといった州は申請手続き中です。この州レベルの関与は、CCSの経済面及び環境面における利点に対する認識が高まっていることを反映しており、多くの州が間隙の所有権、許認可、CO2パイプライン及び長期的な用地管理責任に対処する法律を制定しています。
カナダ:CCS成長を推進する官民パートナーシップ
カナダは、CCSを連邦政府と州政府の双方から支援するもう1つの国です。カナダは、現行のNDC(2021年提出)の中で、2030年までに温室効果ガス排出量を2005年比で40%~45%削減することを公約しています。この目標は、2050年までに排出量ネットゼロを達成するというカナダのコミットメントに対して同国政府の説明責任と透明性を求める、カナダ・ネットゼロ排出説明責任法(Net-Zero Emissions Accountability Act)で裏打ちされています。
いくつかの調査は、CCSによって既に約4,500万トンのCO2が安全に貯留されているものの、同業界は排出削減目標を達成するために、2030年までに最低でも年間1,500万トンの貯留容量を達成するために規模を大幅に拡大しなければならないことを示しています。
CCSを支援するカナダ連邦プログラムには下記が含まれます。
- CCUS投資税額控除(CCUS Investment Tax Credit:ITC)
- GHGオフセット・クレジット制度規制(GHG Offset Credit System Regulations)(DACの手続きを含む)
- カナダ・インフラ銀行(Canada Infrastructure Bank)によるCCUSインフラへの投資
- クリーン燃料規制(Clean Fuel Regulations)
- カナダ成長基金(Canada Growth Fund)
州レベルでは、アルバータ州の技術革新・排出削減(Technology Innovation and Emissions Reduction:TIER)制度が、GHGsの価格付けを規制しています。この規制は、州内排出量の約60%を対象としています。TIERによって規制されている施設は、排出量を基準値以下に維持しなければならず、他の取引制度と同様に機能し、排出量が基準値を下回っている場合は実績クレジットを生み出します。排出量が基準値を上回っている場合、施設はアルバータ州排出オフセット(Alberta Emissions Offsets)を生成するか、排出実績クレジットを提出するか、あるいはTIER基金を資金的に援助するTIER基金クレジットを購入することで準拠します。規制されている施設は、排出削減技術としてCCSないしEORを利用して排出オフセットを生成でき、そのオフセットは貯留クレジットに変換することができます。貯留クレジットは排出実績クレジットのように機能し、取引が可能です。TIERによって規制されている施設は、CO2を回収し、それを施設内で貯留するか、貯留ないしEORのために他の施設に輸送することができます(アルバータ州政府、2022年)。TIER基金の収益はまた、カナダ排出削減機構(Emissions Reduction Alberta)等の組織も支援し、その組織が今度はCCUS技術開発に資金提供を行います(カナダ排出削減機構、2020年)。
ブラジル:南米でCCS枠組を確立
ブラジルは、CCSの包括的な法的及び規制的枠組を確立した法案1425/2022の可決によって南米のリーダーとして台頭してきました。ブラジルは、CCS特有の法律を制定した南米初の国であり、同地域の他諸国に複製可能なCCS枠組を提供することができます。
未来の燃料法案528/2020は、地中貯留サイトのオペレーターに義務を課すものであり、重要な節目を意味します。しかし、ブラジルはCCSを前進させる上で、下記のような複数の課題に直面しています。
- 資金調達と財政支援:税額控除やその他の財政的インセンティブの利用可能性が限られていることが、プロジェクト開発の妨げになる可能性がある。
- CO2輸送インフラ:CO2パイプラインないしその他の輸送ソリューションのための官民パートナーシップの構築は、CCSバリューチェーンを統合する上で極めて重要である。
- 国民の認識:CCSプロジェクトに対する認識と支持を高めるために地域社会を関与させることは、反対の可能性を克服するために不可欠である。
これらの課題にもかかわらず、規制的枠組の確立に向けたブラジルの積極的なアプローチは、同国をCCSの潜在的な地域リーダーとして位置付けるものであり、南米全体で同様の展開を促す力を持ちます。
2024年CCSに関する政策的、法的及び規制的総括の全文を読むには、下記のリンクをクリックしてください。
Thought Leadership - CCS Policy, Legal and Regulatory Review - Global CCS Institute