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インサイト&コメンタリー:2025年APAC CCSフォーラム:総括
5th June 2025
トピック: Institute News
発行日:2025年6月5日
「協力。行動。展開。CCSの道筋とバリューチェーンの構築(Collaborate. Act. Deploy. Building CCS pathways and value-chains)」というテーマを掲げ、インスティテュートの2025年APAC CCSフォーラム(2025 APAC CCS Forum)は、様々な部門のCCS推進者をマレーシアに集結させ、2日間にわたって活発な議論、知識交換及びネットワーキングを行いました。
CCSは単なる技術的ソリューションではなく、戦略上の必須事項である
フォーラムにおける議論は、2050年までに排出量ネットゼロというマレーシアのコミットメントを達成する上でのCCSの戦略的役割について語ったYB Dato Hajjah Hanifah Hajar Taibマレーシア経済副大臣(Deputy Minister of Economy)による開会の挨拶で始まりました。
副大臣はスピーチの中で、CCSは単なる技術的ソリューションではなく、戦略上の必須事項でもあり、現在の経済的現実と将来の低炭素化への願望をつなぐ架け橋になると強調しました。
また、同国の努力は孤立したものであってはならず、すなわち、世界的な課題には世界的な解決策が必要であり、革新を促進し、知識を共有し、開発途上国が取り残されないようにするためには、戦略的なパートナーシップが鍵だと強調しました。
副大臣は、フォーラムの残りの時間における議論の基調を設定するため、出席者に対し、共有の目的と連帯責任によって団結し、一丸となって前進するように呼び掛けました。
CCSバリューチェーン及び越境CO2輸送・貯留は、APAC地域に大きなチャンスをもたらす
フォーラムを通じて、CCSバリューチェーン及び越境CO2輸送・貯留は、アジアに大きなチャンスをもたらすことが明らかになりました。
CO2輸送・貯留部門の主要企業の代表者は、このことを繰り返し述べ、増え続けるプロジェクトを背景に、同地域においてこの産業が急速に発展しており、それら企業のサービスに対する需要が増加していることを伝えました。しかし、費用は比較的高いままであることから、それを低減させるためにバリューチェーンをさらに効率化する必要性を巡って議論が行われました。
同地域におけるプロジェクトの増加も明確に示され、開発後期にあるものから完全に操業可能なものまで、9社がそれぞれのプロジェクトの進捗を共有しました。地域全体では、現在66件のプロジェクトが開発中、2件が建設中、3件が操業可能となっています(2025年2月28日時点)。
地域の継続的な前進ために必要な「目的に合った(Fit-for-Purpose)」道筋
フォーラムでの議論は、アジア全域におけるCCSのバリューチェーン及び道筋の構築を成功させるために必要な主要素に的が絞られました。これらの要素における鍵は、地域や関係者特有のニーズを考慮した「目的に合った(fit-for-purpose)」アプローチでした。
その実践例として、フォーラムの参加者は、日本、マレーシア及びシンガポールの政府代表者から、CCSがどのように政府の政策、プログラム及びイニシアティブに組み込まれており、それが投資にインセンティブを与えると共に、地域協力を促進していることを聞きました。
パネル・ディスカッションにおいても、CCS展開をさらに支援し、地域全体に道筋を構築するための、政府間協定といった二国間及び多国間、あるいはそのどちらかの取り組みや、地域諸国による協力の重要性に焦点が当てられました。
ロンドン議定書(London Protocol)から地域社会の参画に及ぶ法的な考慮事項
管轄区域や国境を越えてCO2を輸送し貯留する上での法的な考慮事項もまた、大きな焦点となりました。議論では、ロンドン議定書から、プロジェクトの開始時から利害関係者、特に先住民の地域社会を参画させる重要性まで、成功するために極めて重要となる様々な政策的、規制的及び商業的側面が取り上げられました。
CCSプロジェクトへの投資誘致は重要な優先事項
CCSを支援するための政策及び規制的枠組を迅速に整備したアジア各国の政府にとって、現在の焦点はプロジェクトの資金調達に当てられており、投資誘致が重要な優先事項となっています。これは大半のCCSプロジェクトの困難な側面の1つです。
金融機関及び政府機関の代表者は、プレゼンテーションを行い、パネル・ディスカッションに参加し、フォーラムの参加者にCCSプロジェクトの資金調達に関する情報や、商業的に実現可能なCCS投資のためのビジネス・モデルを提供しました。
CCS技術の展示
昨年度に開催し大好評だった「技術スピード・ネットワーキング・イベント(Technology Speed Networking Event)」が再び開催されたことで、フォーラムの参加者は、CCS技術について「実践的」に深く掘り下げて知ることができました。LETA主催で10社がそれぞれのCCS技術を熱心なフォーラム出席者に紹介しました。
連携し、協力し合うアジアは、国境を越えるCCSの世界的リーダーとして、新たな市場と地域の繁栄への道を切り開ける
2日間にわたる活発な議論、知識共有及び活気のあるネットワーキングを経て、2025年APAC CCSフォーラムは終了しました。インスティテュートの新興CCS市場担当戦略アドバイザー(Strategic Adviser Emerging CCS Markets)であるAlex Zapantisは、以下のように締め括りました。
- CCSの展開、特に越境CO2輸送・貯留は、APAC地域に大きなチャンスをもたらす。
- 同地域には、CCSに応用、適応及び再利用できる専門知識及び既存インフラに加え、サービスに対する需要を活かすのに十分過ぎるほどの貯留資源がある。
- 地域の各国政府及び民間部門は、本格的な地域CCS産業に対する障害に積極的かつ迅速に取り組んでいる。
- これらの利点と既存の地域協力関係を足掛かりにすることで、連携し、協力し合うアジアは、新たな市場と地域の繁栄への道を切り開くことができる。
- これらの道筋及びバリューチェーンは、アジアの産業を維持し、多様化することに役立ち、産業を脱炭素化しながら、雇用、経済成長及びエネルギー需要に恩恵をもたらす。
これまで取り組みは順調に進んでおり、インスティテュートはこれを可能にする政府、企業及び機関を支援できることを誇りに思っています。
APACにおけるCCSの詳細な進捗にご関心がおありですか?政策及び法整備の概要、プロジェクト数、主要プロジェクト及び主要国との協力については、インスティテュートによるAPAC概要ファクトシート・シリーズ(APAC At a Glance Factsheet Series)をお読みください。