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インサイト&コメンタリー: 概括:豪州・東南アジアCCSフォーラム(Australia and Southeast Asia CCS Forum)

28th March 2024

トピック: ♯institutenews

発行日:2024年3月28日

原典:グローバルCCSインスティテュート

 

3月第2週目、グローバルCCSインスティテュートは、2024年豪州・東南アジアCO2回収貯留フォーラム(2024 Australia and Southeast Asia Forum on Carbon Capture and Storageを主催しました。本イベントでは、インスティテュートのメンバーと幅広いCCS支持者が一堂に会し、ネットワークを構築すると共に、主要な問題について知識を共有し、地域のネットゼロへの移行という観点からCCSについて議論しました。フォーラムには、アジア全域(豪州、日本、インドネシア及びマレーシアを含む)の政府代表者や、セメント、鉄鋼、水素、肥料、石油・ガス、保険・コーポレートファイナンス、並びに地域開発協同組合や多国間開発銀行を含む非政府組織等、幅広い産業が参加しました。

 

3日間のフォーラムでは、幅広い問題が取り上げられましたが、豪州の国内及び沖合双方の貯留プロジェクトの可能性、排出削減が困難な部門におけるCCSの不可欠な役割と費用競争力、適切な規制枠組や政策措置が整備されればインドネシア及びマレーシアといった国々を地域のCCSリーダーに位置付けることになる、東南アジアにおけるCCSの急速な発展、CCSに係る常に進化し続けるソーシャル・ライセンスと一般市民の関与の性質等、いくつかの主要トピックが明らかになりました。

 

APACフォーラム 1日目-311

 

1日目を開会するにあたり、インスティテュートの知識・分析担当ジェネラル・マネージャー(General Manager Knowledge and Analysis)であるIan Havercroftは、アジア太平洋地域におけるCCS開発の目に見える力強さについて言及し、CCS支持者に対し、気候目標を達成するための共同的努力の基礎となるものとして協力を認識するよう促しました。

 

Chris Bowen豪州気候変動・エネルギー大臣(Minister for Climate Change and Energy)は、ビデオを通じて講演し、「IEAやIPCC等の専門家が同意しているように、ネットゼロの達成には、複数のソリューション、ツール及び技術を組み合わせる必要があり、CCSはその組み合わせの一部となる必要がある」と述べました。同大臣は、豪州政府が継続的に取り組んでいるCCS関連政策に言及し、「(前略)CCSへの投資が行われるように、安定した事業環境を作りたい」と述べました。

 

Reece Whitby西オーストラリア州エネルギー・環境・気候行動大臣(Western Australian Minister for Energy, The Environment, and Climate Action)は、代表者達による同州訪問を歓迎すると共に、西オーストラリア州の脱炭素化経路においてCCSが果たす重要な役割を強調しました。

 

豪州カーティン・エネルギー移行研究所所長(Director – Curtin Institute for Energy Transition)であるPeta Ashworth教授(OAMは、CCSを巡るソーシャル・ライセンスの問題について語りました。Ashworth博士は、ネットゼロへの移行の一環としてCCS技術が重要であるということをしっかり理解してもらうと共に、とりわけ再生可能エネルギーの展開に悪影響を与えないという認識を強めるために、CCS支持者はより幅広い一般市民を関与させることが極めて重要であると述べました。

 

CCS機会及びそれを支援する政策枠組に関する豪州政府の見解は、下記の方々が共有しました。

  • Bronwyn Ray、豪州気候変動・エネルギー・環境・水資源省(DCCEEW)脱炭素化イニシアティブ課次官補[課長](Assistant Secretary [Branch Head], Decarbonisation Initiatives Branch - Department of Climate Change, Energy, the Environment and Water)
  • Kara Peach、豪州産業・科学・資源省(DISR)沖合CCS制度見直し担当課長(Manager, Review of Offshore CCS Regime - Department of Industry, Science and Resources)
  • Will Howard、豪州気候変動局主任科学者(Lead Scientist - Climate Change Authority)

 

Bronwyn Ray氏(DCCEEW)は、豪州政府のネットゼロ計画(Net Zero Plan)という幅広い文脈の中における国内CCS政策状況について取り上げ、Kara Peach氏(DISR)は、沖合CCSプロジェクトの規制について、特に沖合規制枠組の強化に重点を置いて語りました。Will Howard博士(CCA)は、気候変動局の役割を説明し、近々予定されている部門別経路の見直しについて考察しました。

 

午後は、排出削減が困難な部門の代表者達が、アンモニア/水素製造及びセメント製造におけるCCSの費用競争力と技術成熟度について発表を行いました。続いて、西オーストラリア州のマルチユーザー・ハブ及びインフラの開発可能性について複数のプレゼンテーションが行われ、特に導入を促進するために「サービスとしての貯留」(storage-as-a-service)とインセンティブ・メカニズム(規制面及び資金面の双方)に重点が置かれました。1日目の最終セッションは、技術に関する短いプレゼンテーションから構成され、アミン溶液ベースの回収、モジュール式技術展開及びいくつかのポートフォリオの概要が取り上げられました。

 

 

APACフォーラム2日目-312

 

フォーラム2日目は、インスティテュートの渉外担当ジェネラル・マネージャー(General Manager External Affairs)であるAlex Zapantisが開会し、アジア全域におけるCCSの必要性と巨大な可能性について説明しました。

 

続いて日本、米国及び豪州政府の代表者達が登壇し、経済産業省(METI)資源エネルギー庁石油・天然ガス課 研究開発専門職(CCS)は、CCSに関する地域間協力を強化し、CCUSの規制枠組を整備するために日本政府が行った最近の取り組みを概説しました。

 

米国エネルギー省カーボンマネジメント担当副次官補(Deputy Assistant Secretary for Carbon Management - US Department of Energy)のMark Ackiewiczは、DOEのカーボンマネジメント作業プログラム、並びに様々な政策及び資金提供イニシアティブから得られた成功と教訓について洞察を与えました。

 

豪州気候変動・エネルギー・環境・水資源省(DCCEEW)CCUS・水素協力担当部長(Director, CCUS & Hydrogen Collaboration)のJocelyn Taylorは、CCS及び水素を巡る豪州の地域間協力努力、並びにロンドン議定書(London Protocol)の下でのCO2越境移動が直面する政策的障害について率直に発表しました。

 

本フォーラムとは関係ないものの、何人かの代表者及び講演者は、その日に西オーストラリア州議会(West Australian Parliament)において、可決されれば陸上CCUS活動を規制することになる法案の第二読会が行われていることを指摘しました。読会では、グローバルCCSインスティテュートが、世界的なCCSデータ及び西オーストラリア州における同技術の可能性についてCSIROと行った作業の双方に関して、何度か言及されました。

 

Howden Insurance Brokersの代表者達は、この種のものでは同社初となる、商業規模CCS施設からのCO2漏洩を対象とする保険ファシリティを発表しました。同ファシリティは、プロジェクトのリスク回避を目指すもので、プロジェクト・デベロッパーに対し、より低い資本費で様々な資金源へのアクセスを提供します。これに続いて、投資を奨励するためのCCUSバリューチェーンのデリスキングに関する忌憚のないパネル・ディスカッションが行われ、聴衆からは、プロジェクトの資金調達及び保険、長期責任、信用リスク等、様々な側面を含む質問が投げかけられました。

 

午後はいくつかの主要セッションに分けられました。昼食後、数人の講演者が日本のCCS開発について、政策及び規制、資金調達、国際協力並びに輸送といった幅広い分野を取り上げて見識を提供しました。日本は、地域におけるCCSの招集国かつ推進国という主要な地位にあり続けており、CO2船舶輸送技術の開発において重要な進展を見せています。

 

2日目の最終セッションは東南アジアの発表者等が登壇し、インドネシアにおけるCCSのビジョン、インドにおけるCCSの可能性と普及の可能性、並びにパイプライン・インフラ技術及び考慮事項が取り上げられました。この日は、東南アジア全域のCCSハブに関するパネル・ディスカッションにおいて、市場成長の複雑さを掘り下げ、気候行動を巡る政治的な意志を喚起し、地域的な対応の中でCCSを促進することで締め括られました。

 

 

フォーラム最終日である3日目は、豪州政府とCCS支持者、産業界代表者及びプロジェクト・デベロッパーとの双方向情報共有セッションが行われました。

インスティテュートは、本フォーラムを支援して下さった下記の組織に感謝の意を表します。

 

  • 豪州西オーストラリア州投資・貿易チーム(Invest & Trade Western Australia)
  • Mitsui E&P Australia社
  • Pilot Energy社
  • Woodside Energy社
  • 豪州西オーストラリア州中西部開発委員会(Mid-West Development Commission)
  • 豪州低排出技術協会(LETA)
  • Howden Insurance Brokers社
  • ExxonMobil社
  • CarbonNetプロジェクト(豪州ビクトリア州政府)
  • Business Events Perth
  • 株式会社INPEX

 

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豪州ゴーゴン(GorgonCCS施設の訪問

 

フォーラムに先立ち、Chevron社ゴーゴン施設の視察が行われました。グローバルCCSインスティテュートのスタッフ数人を含む代表者達は、回収プラントや2つある圧入サイトのうち1つ等の施設を見て回りました。プロジェクトの後退にも拘わらず、ゴーゴンは現在、年間160万トンのCO2を貯留しており、2019年の操業開始以降、900万トン以上を貯留しています。

 

豪州バロー島(Barrow Island)に位置するゴーゴンは、3つのトレーンから成る、年間1,560万トン規模のLNG施設です。CO2が圧入される貯留層は、バロー島の地下2キロメートルに位置する巨大な砂岩層です。

 

インスティテュートの渉外担当ジェネラル・マネージャーであるAlex Zapantisは、ゴーゴンのようなプロジェクトの規模の重要性を強調しました。「比較までに、豪州排出削減基金登録簿(Australian Emissions Reduction Fund Register)によると、2012年から現在までに豪州炭素クレジット(Australian Carbon Credit Units)が発行された最大の削減プロジェクトは、12年間で約300万トンのCO2削減を実現しました。ゴーゴンは、4年間でその約3倍の量を恒久的かつ安全に貯留しました。我々は1トンでも多く削減する必要があることから、ゴーゴンのような数メガトン規模のプロジェクトが必要なのは確かです」と同氏は述べました。

 

記事は、グローバルCCSインスティテュート APAC広報マネージャー(Public Affairs Manager)のMatt Steyn氏が執筆しました。

 

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