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インサイト:2026年ロンドン気候行動週間(London Climate Action Week 2026) | 気候行動に向けたカーボンマネジメントの拡大-イベント総括
31st July 2026
トピック: Institute News
発行日:2026年7月31日
ロンドン気候週間(London Climate Week)の一環として、グローバルCCSインスティテュート(Global CCS Institute)と英国インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)は、一般向けイベント「気候行動に向けたカーボンマネジメントの拡大(Scaling Carbon Management for Climate Action)」を開催し、気候及びCCSの専門家を結集させ、世界の気候目標を達成する上でCCS及び工学的カーボンマネジメントが果たす役割について検討しました。
会合では、貯留インフラの必要性からプロジェクトを進めるために必要な資金調達に至るまで、CCSの未来を形作るいくつかの要因について検討しました。参加者はまた、主要な英国CCSプロジェクトの取り組みに関する当事者の知見を得ると共に、アジア太平洋地域全体でカーボンマネジメントがどのように進化しているかについて、より広い視点からの見解を聞きました。これらのセッションを通じて、着実に進展している状況と、英国内外における気候行動に向けたカーボンマネジメントを拡大するために、まだ取り組まなければならない課題の双方が浮き彫りになりました。
データに基づく:CO2地中貯留に関するロンドン登録簿(London Register of Subsurface CO2 Storage)
イベントを開始するにあたり、インペリアル・カレッジ・ロンドンのSam Krevor教授は、一般公開されている記録であり、世界中の地中貯留プロジェクトを通じて恒久的に貯留されているCO2量を追跡する「CO2地中貯留に関するロンドン登録簿(London Register of Subsurface CO2 Storage)」を紹介しました。世界で700件以上のCCSプロジェクトが開発段階ないし操業段階にある中、登録簿は、世界の脱炭素化におけるCO2地中貯留の貢献度を測定するための重要な指標となります。
登録簿は、1996年以降、3億8,300万トンのCO2が恒久的に貯留されていることを示しており、2023年だけで4,500万トンに上ります。2025年に設立された登録簿は、気候変動の緩和におけるCO2貯留の貢献度を定量化し、将来予測の不確実性を低減し、エビデンスに基づいた政策決定を支援するために必要な歴史的なエビデンス基盤を提供しています。
DNVによる独立した検証を受けたこの登録簿は、CCS展開が世界中で拡大し続け、ネットゼロ目標が近づく中、進捗状況を追跡するための信頼できる情報源としての役割を果たしています。
英国内外におけるCCSイニシアティブの資金調達
資金調達及び保険に関するパネルで得られた最も明確なメッセージの1つは、CCS技術がますます定着しつつあり、次のステップは投資に必要な信頼を築くことであるという点でした。安定した政策、明確な長期貯留責任、予測可能な収益源、プロジェクト・リスクの明確な配分が、融資可能なプロジェクトを実現するための鍵であることが強調されました。
商業銀行の視点から、Standard Charted銀行のLeonidas Theodorou氏は、リスクが明確に把握され、適切に配分されている場合、貸し手は複雑なインフラへの融資をより積極的に行う傾向にあると指摘しました。CCSの場合、融資可能性は、技術そのものより、安定した政策・規制枠組み、長期貯留義務の明確な帰属、そしてプロジェクトを数十年にわたって支える予測可能な収益モデルに左右されます。英国初のCCSクラスターにおいて、その信頼は、民間資本がまだ引き受けようとしないリスクを軽減する、政府による的を絞った政策及び支援を通じて築かれてきました。
資金調達の観点を踏まえ、WTW社のMarie Reitersh氏は、政府が提供する政策支援及びリスク分担を補完し、プロジェクトの融資可能性を支援する保険商品を開発する上で、保険業界は重要な役割を果たすべきだと指摘しました。保険会社は、石油・ガス部門における経験を通じて、物的損害や坑井制御等、多くの操業リスクに精通していますが、CCSには、地中貯留パフォーマンス、炭素クレジットの収益保護、長期責任等、新たな課題が伴います。プロジェクトの開発が進み、運用実績が蓄積されるにつれ、これらのリスクの引受はより容易になると見込まれています。Reiter氏はまた、プロジェクトの規模が拡大するにつれ、相互に関連するリスクの重要性が高まっていることを踏まえ、保険会社は、CCSバリューチェーンの各要素に個別に対処するのではなく、バリューチェーン全体にわたる保険ソリューションの開発を検討すべきであるとも主張しました。
両講演者から繰り返し指摘されたのは、CCSの実現において、政策や規制の確実性は、直接的な財政支援と同様に重要になり得るという点でした。英国のトラック-1モデルは、政府が保証する長期責任と輸送・貯留インフラの収益支援の組み合わせが、民間金融機関や機関投資家からの資金を呼び込むことに貢献したことから、このアプローチの好例として挙げられました。
英国におけるCCSプロジェクトの開発事情
資金調達状況からプロジェクト実施へと話題を移し、ノーザン・エンデュランス・パートナーシップ(Northern Endurance Partnership)のHans Sizoo氏は、これらの概念が英国における実際のCCSプロジェクトにどのように反映されていっているかについて、実践的な見解を提供しました。
ノーザン・エンデュランス・パートナーシップ(NEP)は、英国初の政府の支援を受けたCCSクラスターの1つである英国東海岸クラスター(East Coast Cluster)を支える、民間所有の輸送・貯留合弁事業です。同クラスターは、世界初のCCSを伴うガス火力発電所の1つとなることを目指しているネットゼロ・ティーズサイド発電所(Net Zero Teesside Power)を含む、英国ティーズサイド(Teesside)及びハンバー(Humber)全域のプロジェクトを結び付けるものです。
プレゼンテーションでは、大規模CCSインフラを実現することの複雑さが示され、プロジェクトの調整が展開を成功させるための重要な要素であることが強調されました。また、政策立案者から資金提供者、地元地域やコミュニティの関係者まで、利害関係者間で早期から連携していくことは、プロジェクトを順調に進めるために不可欠であることが指摘されました。
Sizoo氏はまた、東海岸クラスターの最初のCCSプロジェクト群について、政策策定から最終投資決定(FID)に至るまでの道のりを概説し、その過程における重要な節目について紹介しました。これらには、規制対象となる輸送・貯留に関する取り決めや、CO2回収を対象とした差金決済契約(Carbon Capture Contracts for Difference)等の長期的な収益支援メカニズムを含む、英国CCSビジネス・モデルの構築に加え、東海岸クラスターのトラック-1プロジェクトとしての選定が含まれます。こうした商業的・規制的メカニズムが相まって、NEP及びネットゼロ・ティーズサイド発電所に対する約80億ポンドのプロジェクト・ファイナンスの基盤が提供されました。
また、地元地域からの強力な支援も重要な実現要因として挙げられ、雇用、見習い制度、地域経済の成長等、CCSに伴う経済的機会が、市民の支援を得る重要な原動力として強調されました。
全体として、プレゼンテーションでは、技術力だけが大規模なCCS展開を左右するのではなく、政策、投資、インフラ、利害関係者の支援の連携がプロジェクトの実現を助けるために必要であることが改めて強調されました。
世界の概況:インドネシア及び中国におけるCCSの展望
最終セッションでは、英国外に目を向け、CCSがアジア太平洋地域全体でどのように勢いを増しているかが検討され、インドネシア及び中国が、カーボンマネジメントの取り組みを加速させるための野心的な戦略を紹介しました。
インドネシア共和国国民協議会(Indonesia’s People’s Consultative Assembly)の副議長(Deputy Speaker)であるEddy Soeparno氏は、地域CCSハブになるという同国の野心を示しました。推計6,000億トンのCO2貯留可能性を持つインドネシアは、自国の脱炭素化と将来的な国境を超えたCCS開発の双方を支援することを目指しており、日本、韓国、台湾、シンガポールを含む、近隣の工業国に地域的な貯留ソリューションを提供することを見据えています。
Soeparno博士は更に、インドネシアのアプローチを形成する3つの国家優先事項、すなわち、輸入燃料への依存軽減によるエネルギー・レジリエンスの強化、政府の経済成長目標の支援及び温室効果ガス削減を概説しました。進展は既に見られており、2024年にはCCSに関する大統領令(Presidential regulation)が公布されたほか、将来的な国境を超えたCCS協力を可能にするため、日本、韓国及びシンガポールとの間で覚書が締結されました。プレゼンテーションではまた、魅力的な投資環境を作ることの重要性が強調され、民間投資を促進する鍵として、法的確実性、一貫した政策及び税制上のインセンティブが挙げられました。
インドネシアのプレゼンテーションが将来の投資と国境を超えた開発に適した環境整備に焦点を当てていた一方、インスティテュートの中国担当責任者(Head of Country-China)であるXiaoliang Yang博士による短いプレゼンテーションは、CCUS展開の拡大に向けた中国のアプローチを浮き彫りにしました。Yang博士は、中国が2000年代初めからCCUS研究開発に投資しており、2060年以前に炭素中立を達成するという同国の2020年コミットメントが発表されたのに続き、展開が加速していることを指摘しました。このような政策の進展と並行して、中国は、発電、鉄鋼、セメント、化学、石油精製を含む部門にサービスを提供する共用輸送・貯留インフラを持つ大規模産業CCUSハブを開発しています。Yang博士はまた、中国における大規模展開を支援するためのより広範なアプローチの一環として、CCUS等、対象となる脱炭素化プロジェクトに資金を提供するCO2排出削減ファシリティ(Carbon Emission Reduction Facility:CERF)等、的を絞った資金調達メカニズムの役割を強調しました。
カーボンマネジメントと気候行動ラウンドテーブル
ロンドン気候行動週間における一般向けイベントと並行して、グローバルCCSインスティテュートとインペリアル・カレッジ・ロンドンは、カーボンマネジメント・ラウンドテーブル(Carbon Management Roundtable)を主催しました。ラウンドテーブルには、幅広い利害関係者が集まり、より広範な気候行動におけるカーボンマネジメントの役割について活発な議論を交わしました。
ラウンドテーブルは、現在の優先課題について意見を交換し、共通の関心事項や協力の可能性のある分野を特定すると共に、カーボンマネジメントが産業脱炭素化をどのように支援できるかについて議論する場を提供しました。参加者は、自然に根ざしたソリューションに取り組む団体、技術企業、非営利団体、業界団体等、様々な組織を代表しており、いずれも持続可能性や気候ソリューションの規模拡大の推進に関心を示していました。インスティテュートは、こうした意見交換を継続し、様々な部門の利害関係者を結び付けることで、連携を促進し、知識を共有し、世界の気候目標を支える実践的な解決策の推進に尽力してまいります。
今後の道筋
CO2地中貯留に関するロンドン登録簿から英国初のCCSクラスターやアジア太平洋地域全体で台頭する機会に至るまで、イベントでは、カーボンマネジメントにおいて、いかに幅広い進展が見られるかが浮き彫りとなりました。課題は依然として残っているものの、一連の議論からは、より広範な気候変動対策の一環として、カーボンマネジメントを拡大するために必要なプロジェクトの実施、投資の誘致、そしてパートナーシップの構築にますます重点が置かれていることが伺えました。