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24th February 2020

CCS in the news 日本語版

発行日:2020224

原典:The Hill

 

米国は、CCS技術の世界的な普及をリードしています。進歩的な政策枠組と継続的な政府支援が、次世代CCS施設の展開を推し進めています。気候変動の影響が今までに増して壊滅的になってきており、出来るだけ早く排出削減する必要がある中で、これらは歓迎されるべき展開です。しかし、正味ゼロ排出気候目標を達成するためには、現在から2040年の間にCCS施設の規模を100倍にする必要があるため、更なる支援策及びメカニズムが要求されています。

 

炭素に価値が与えられた今、グリーン資金調達、CO2インフラ・ネットワーク及び回収費用削減等、更なる障壁を乗り越えるための新しいトレンドやイニシアティブによって、技術の急速な成功への楽観視が高まっています。

 

イノベーション主導型の経済並びに連邦と州レベルの双方における政策的リーダーシップにより、米国におけるCCS普及は強化されてきました。

 

見直しされた45Q税控除は、引き続き世界で最も進歩的なCCS固有のインセンティブです。クレジットが$200t/CO2近くで取引されている米国カリフォルニア州のLow Carbon Fuel Standard CCS Protocol(低炭素燃料基準CCSプロトコル)は、ほぼ間違いなく 最も革新的なものの1つです。その結果、数多くの新規施設が計画されており、それにはセメント及び肥料工場への新しい技術利用や、大規模直接空気回収(DAC)などが含まれています。複数のCO2排出源をつなぎ規模の経済を達成することで、年間5,000万トンのCO2を貯留できるハブやクラスターは、次のCCS施設の波を明確にしています。

 

先進的な政策はまた、CO2の恒久貯留のためのCO2利用合意等、先行者が新規市場参入者との新しいパートナーシップやビジネス・モデルを形成する原動力にもなっています。

 

国際エネルギー機関(International Energy Agency)によると、持続可能な開発目標とパリ協定を達成するためには、2040年までに2,000か所以上の大規模CCS施設が操業している必要があります。同技術への世界的なアクセス及び最低費用でのエネルギー転換は、米国におけるCCS普及の成功と結び付いています。従って、大規模普及に対する更なる障壁を取り除いていくことが非常に重要であり、それはまず45Q税控除申請のための完全ガイダンスの発表から始めなければなりません。

 

CCSのような、商業的には利用可能であるものの幅広く普及していない技術は、投資家の目にはリスクが高く映るため、手頃な資金調達手段を確保するのが困難であり、この問題は「technology valley of death(技術における死の谷)」としても知られています。従って、世界で操業中のCCSプラント19か所のうちの多くが、政府の助成金の支援を受けるか、企業自らが直接ファイナンスしていることは、驚くことではありません。政府支援に支えられた更なるCCS普及がリスク・プレミアム削減の一助になることは確かですが、BlackRock社による最近の発表のように、世界の投資コミュニティによる持続可能性へのコミットメントの強化は、形勢を一変させる可能性を持っています。

 

大手機関投資家による、又は、提案されているEU Sustainable Finance Taxonomy(EU持続可能なファイナンスのためのタクソノミー)のような規制を通したグリーン投資基準は、CCSがもたらす排出削減価値を認めています。確かに、HSBC社による最近の報告書が明らかにしているように、プロジェクト評価プロセスの中でCCS等クリーン・エネルギー技術の環境側面に見返りを与えることで資本配分と気候目標を整合させることは、リスク・プロファイルを大幅にシフトさせることになります。

 

更に、米国議会においては、更なるCO2削減及び回収のための非常に重要な投資の乗数要因及び成功要因であるCO2インフラ・ネットワークを構築する必要性に、議員達の議論は現在移ってきています

 

米国には既に、世界のどの国よりも長い、5,000マイル以上のCO2パイプラインがあります。それでも、専門家は、気候目標を達成するためには2030年までに容量を3倍にする必要があると推計しています。既存のパイプラインの多くは、単一の人為的CO2排出源と単一の地中シンクをつないでいます。しかし、CO2輸送ネットワークは、複数のCO2排出源を専用の大規模地中貯留サイトと接続することが出来ます。これは規模の経済を生かし、多数の当事者リスクを低減できるだけでなく、新規参加者に利用可能なインフラの利用を提供することで、彼らの参入障壁を低めることにもなります。

 

CO2インフラの役割の好例はノルウェーのNorthern Lights(ノーザン・ライツ)プロジェクトであり、欧州CO2インフラ・ハブになることを構想したものです。このネットワークは、共通利益プロジェクトとしてEUに支援されているだけでなく、欧州全体の利害関係者の関心を呼び、覚書(MoU)を結ぶことにつながっています。それにも拘わらず、インフラ・ネットワークの構築は、プロジェクト初期の容量を上回る規模のパイプラインを建設するために多額の先行資本投資が必要となるため、先行者にとってリスクが大きくなります。これは、輸送されるCO2量の増加を可能とし、規模の経済を達成するために必要なことです。したがって、リスクを低減させるだけでなく、脱炭素化及びCO2回収普及に対する長期的コミットメントのシグナルとなることから、政府支援は不可欠です。同時に、土地利用及び保全といった利害関係者の懸念及び配慮も考慮されなければなりません。

 

費用はしばしばCCS普及の障害として挙げられますが、結局のところ、実践を通した学習によって効率性が得られることから、CCS普及を可能にする政策は、費用削減の中心的な原動力となります。

 

政策によって、企業はエネルギー及び産業バリューチェーン全体の相乗効果を求めるようにもなってきました。例えば、回収技術供給者であるSvante社及びDAC企業であるClimeworks社は、ポイント排出源と直接空気回収の相乗効果を利用して費用削減と回収量増加を目指すため、協力体制を組みました。米国エネルギー省(U.S. Department of Energy)における研究・開発・普及イニシアティブは、費用削減に焦点を置き、固定費用を削減する標準化を進める政策を提案しました。

 

一部の専門家はまた、積層造形が極めて重要になる可能性があることも主張しています。Microsoft社の最近の発表のように、企業による新しい炭素中立へのコミットメントと組み合わせることで、これらの開発は現状を打破するイノベーションを作り上げ、費用削減の有望な見通しをもたらします。

 

気候変動は、包括的な行動を必要とする世界的な問題であり、壊滅的かつ不均等に分布された影響を及ぼします。各国政府によるクリーン・エネルギー・イノベーションにおけるリーダーシップは、低費用技術への世界的なアクセスを可能にすることによって、国内外の排出量を削減します。したがって、初期の政策とプロジェクトの進歩の上に築かれた、CCSに対する現行の米国のリーダー的役割を継続することは、公平な正味ゼロ排出移行のために極めて重要なのです。

 

Lee Beck氏は、Atlantic Council(米国大西洋評議会)Global Energy CenterのWomen Leaders in Energyフェローであると共に、グローバルCCSインスティテュートのアドボカシー・コミュニケーション担当上級アドバイザーでもあります。

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