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GCCSIインサイト&コメンタリー:ニューヨーク気候週間―CCUSへのファイナンシング:ビジネスモデルの構築

29th September 2023

トピック: Institute News

グローバルCCSインスティテュート(GCCSI)はクリーンエネルギー大臣会合(CEM)CCUSイニシアチブとともに、ニューヨーク気候週間の期間中の9月21日、イベントを開催しました。ファイナンスセクターのステークホルダー、CCUSプロジェクトの開発者、政府関係者たちが集まり、CCUS展開の拡大に資する、可能性のある政策アクション、新興の事業モデルなどについて考えを共有し理解を深めました。

 

イベントは、レイサム&ワトキンス国際法律事務所のご協力を得て、ニューヨークのダウンタウンにある同法律事務所のオフィスで開催されました。

 

CCUS(BECCS、DACCSによるCO2除去なども含まれる)は、気候中立の実現に向けて大きな役割を果たすことが期待され、極めて重要な気候変動緩和技術として認識されています。CCUSのレベルをさらに高め、そのポテンシャルを十分に活かして世界がネットゼロ排出へ到達するのを支援し得る信頼性の高い解決策となるようにするためには、向こう30年にわたって世界でおよそ1兆ドルの資本投資が要求されます。また、求められる展開レベルを実現するためには、多様な種類の資本をCCUSに投資することが必要です。これまでのところ、CCUSプロジェクトの大部分はコーポレートファイナンスと政府資金によって賄われています。

 

登壇者とイベント参加者は、CCSプロジェクトファイナンスの経験を共有し、大規模展開の実現に向けて十分な資本を動員するためには、どのような手段と条件を追加する必要があるかということについて考えを提供しました。

 

グローバルCCSインスティテュートの取締役であるCynthia Wang、および米国エネルギー省化石エネルギー・カーボン管理局(FECM)のカーボン管理局担当次官補代理であるNoah Deichの両氏は、GCCSIとCEM CCUSを代表してワークショップ参加者に歓迎の意を表しました。

 

両氏は、CCSに向けてさまざまな状況が順調に進みつつあること、CCUSの規模と融資実行可能性(bankability)の実現のために必要な条件がついに整ったことなどを強調しました。さらにデイチ氏は、米国ではCCSを対象とする政策枠組みの整備がすでにおこなわれ、政府はなお、CCS展開の長期的拡大を支援するため、そうした枠組みをいかに発展させるべきかについて検討を続けていると強調しました。

 

 

 

最初のパネルでは、CO2排出削減困難な産業(Hard-to-Abate産業)におけるCCSへのファイナンシングに注目しました。

 

  • アルセロールミッタル - Stéphane Tondo気候変動、政府関連業務担当
  • シティ- Anthony Yuen マネジングディレクター、コモディティ戦略統括責任者、アジア太平洋地域担当 │ エネルギー戦略統括責任者、シティリサーチ
  • 気候ボンドイニシアティブ - Sean Kidney CEO
  • グローバルセメント・コンクリート協会(GCCA)- Thomas Guillo CEO
  • ホルシム- Pavan Chilukuri CCUS・合成燃料(e-fuel)グループ統括責任者
  • モデレーター:Selim Cevikel グローバルCCSインスティテュート ファイナンス・プリンシパルコンサルタント

 

 

このセッションでは、排出削減困難な産業の脱炭素化の重要性について議論しました。鉄鋼・セメント産業を合わせると、世界の二酸化炭素排出量のおよそ10%を占めています。

 

この鉄鋼・セメント産業においてCCSを展開することが、設定された気候目標を達成するうえで不可欠であるということについて、ほとんどすべての人の意見が一致しています。エネルギー転換に向けてはインフラが必要となり、それに付随してセメントと鉄鋼の新たな需要が必然的に生まれます。しかし、CO2回収コストの観点からすると、CCSはいまだ多額のコストがかかる選択肢であるといわざるを得ません。これに輸送・貯留コストが加われば、費用対効果の問題はより一層複雑で困難なものになります。

 

どのような削減技術においても、CCSの経済的価値はイノベーションと展開の動機付けとなる政策・規制によって大きく変わってきます。そして、必要とされるのは先取的かつ資本集約的な投資です。

 

このパネルでは、セメント・鉄鋼産業においてCCSの開発・商業化の動機付けとなる政策と規制の枠組みについて考えを提供するとともに、政策における課題とギャップを明らかにしました。さらに、利用可能な、もしくは可能性のあるファイナンス手段を通じて、CCSプロジェクトへのファイナンシングを促進する道筋を模索しました。

 

登壇者は、以下について言及しました。

 

鉄鋼・セメント産業のCCS

 

  • 世界のセメント産業において、さまざまな開発段階にあるCCSプロジェクトの数は現在105となっています(2021年、グローバルセメント・コンクリート協会(GCCA)は10の大規模プロジェクトを開発することにコミットしました)。
  • 大幅な進展がみられるものの、必要とされるCCS展開レベルと比較すると、実装においていまだ極めて大きいギャップがあります。
  • セメント産業と異なり、鉄鋼産業にはブルー水素、DRIなどといった数種類のCO2削減オプションがあります。
  • CCSプロジェクトでは、回収プラントを稼働するためのエネルギーが必要となります。このことが、一部の地域ではコスト上の重大な懸案事項となります。
  • セメント製造によるCO2の排出は避けらないため、どのセメント企業も複数の場所において複数のCCSプロジェクトに取り組む必要があります。
  • セメント産業は、収益単位当たりのCO2排出量が最も多くなっています。

 

政策環境

 

  • 政策の状況は、CO2削減オプションを決定するうえで重要な要素となります。
  • CCSの主要課題の一つとして、投資が今まさに必要とされているのに対して、政策および事業の事例がいまだ開発段階にあることが挙げられます。
  • 現状の政策インセンティブはいまだ十分ではありません。とりわけ、リスク低減の政策が必要とされます(調達にかかわるリスクなど)。

 

投資家の関心

 

  • 企業は、グリーンボンドを発行することによってクリーンエネルギーへの転換に対するコミットメントをアピールすることができます。グリーンボンドが資本へのアクセスであることは、投資家からより大きな信頼を得ることにつながります。
  • 投資家の選好度合は、場所、およびその場所の規制に依存します(米国における状況がわかりやすい例)。
  • 投資家は、CCSと再生可能エネルギープロジェクトとの比較をします。例えば、CCSはいまだ進化しているのに対して、風力発電はすでに定まったものとみなされます。また、CCSに見込まれる投資回収期間が5年というのは長く、投資家はより大きな確実性を求めています。
  • 地域開発銀行と国際開発金融機関の役割は重要であるため、特に強化する必要があります。

 

CCSの社会受容性は重要な必須条件

 

  • あらゆる場所においてCCSを社会に円滑に導入する必要があります。これに際しては、政府と民間セクターとの間のパートナーシップが役立つ可能性があります。
  • 投資家の信頼を高める必要があります。
  • CO2削減策としてのCCSに対する信頼を構築する必要があります。
  • CO2の算定を端から端までおこなうことが重要となります。
  • CCS・CCUSが今よりも広く受容される必要があります。

 

 

第二部のパネルでは、CCSインフラへのファイナンシングに焦点を当てました。

 

  • アルバータ排出削減機構(ERA)- Heather Stephens 最高執行責任者
  • マッコーリーグループ - Allen Rickard SVPグリーン投資グループ(GIG)
  • 石油・ガス気候イニシアチブ(OGCI)- Julien Perez バイスプレジデント、戦略・政策担当
  • 米国エネルギー省融資プログラム局 - Ramsey Fahs 政策アドバイザー(コントラクター)
  • モデレーター:Christina Staibグローバルファイナンスセクターリード―グローバルCCSインスティテュート

 

 

このセッションでは、CO2の輸送およびCO2の貯留を含めたCO2インフラの重要性について議論するとともに、投資家を惹きつける事業モデルをいかにして構築するかについて検討しました。このパネルでは、CO2インフラの開発に向けた現行の、および可能性のある政策手段について検討し、CO2インフラの事業モデルへのアプローチを模索しました。

 

CCSを話題にする際、回収、もしくは回収技術コストにばかり焦点が当たりがちという印象があります。しかし、回収したCO2にはその後の行き先が必要であり、それがすなわちCO2インフラです(「CO2インフラ」という用語は一般に、CO2の輸送・貯留をひとまとめに称する際に用いられています)。

 

輸送には主にパイプラインが使用されますが、船舶またはその他の手段を用いる可能性も考えられます。CCS展開を加速するためには、運用中のCO2インフラに加えて開発段階にあるCO2インフラの整備も必要となります。インフラプロジェクトは、得てして大がかりで多額の資本を必要とします。

 

このパネルでは、政策手段についての議論をはじめ、投資家がCO2インフラを投資機会としてどう認識しているか、どのような事業モデルが魅力的であるかなどについて議論しました。

 

登壇者たちはそれぞれの経験を共有しました。例えば、米国における現行の政策支援、ネットゼロ目標の実現に必要とされるCO2インフラの規模についての関連する知見、CO2地中隔離ハブプロセスなどカナダ・アルバータ州における政策支援、EUにおける現行の政策支援、その他の世界の政策シグナル、インフラ投資家の主要地域に対する大まかな認識・傾向など、その内容は多岐にわたりました。

 

登壇者はまた、政策がCCS展開の主要な推進要因であることを指摘しました。米国はすでに多くのことに取り組んでおり、政府はなお、政策をさらに推し進めることを検討しています。現在利用できる政策をもってすれば、100MtのCO2を合理的に回収・輸送・貯留することができると見込まれています。また、カナダのアルバータ州では、カーボンプライスが主な推進要因となっています。これは2007年に導入されたもので、現在の65ドルから今後さらに増加する見通しです。さらに欧州では、イノベーション基金によって、CCS政府とリスクを共有することが可能であるほか、ネットゼロ産業法、炭素国境調整メカニズム(CBAM)、欧州の特定の国における差金決済取引制度などがCCSを促す状況を作り出しています。

 

ここでは、以下のような投資に関する検討事項と、投資家への可能性のあるリスクについて議論しました。

 

  • CCSバリューチェーンのどの部分に投資するのか。
  • 先取的CCS資本プロジェクトのコストと再生可能エネルギープロジェクトのコストとの比較
  • 投資回収スケジュールの許容―可能性として12カ月~4年
  • この取り組みに向けて、排出者の行動変容をいかにして促すか。
  • カーボンプライスの不確実性
  • 実装(労働力、転換方法)

 

さらに、石油・ガス企業の役割、CCSプロジェクトの展開に必要とされる一連の能力などについても議論しました。

 

  • 大規模プロジェクトの管理
  • マインドセット
  • 技術分野の専門知識
  • 地下についての知見
  • リスクを予測する能力

 

パイプラインについては、地域からの支援を確保するうえで地域教育活動が重要であるとの指摘がありました。また、規則・規制を通じて安全にも取り組む必要があります。

 

 

第三部のパネルでは、世界のCCSの普及をさらに野心的に追求することを目指す国際的なイニシアチブである「グローバル・カーボンマネジメント・チャレンジ(」に焦点を当てました。

 

  • ノルウェー石油エネルギー省 - Henriette Nesheim 副局長
  • ソシエテジェネラル - Allan Baker マネジングディレクター、エネルギー転換担当グローバル責任者
  • 米国エネルギー省 - Adam Wong シニアインターナショナルアドバイザー

 

モデレーター:Juho Lipponen コーディネーター、CCUSイニシアチブ、クリーンエネルギー大臣会合

 

ノルウェー政府および米国エネルギー省を代表する登壇者によって、国際的イニシアチブ「グローバル・カーボンマネジメント・チャレンジ(CMC)」の概観が提供されました。また、米国エネルギー省、ノルウェー、ソシエテジェネラルからの登壇者はこの対談のなかで、CMCを通じたCCSへのグローバルなコミットメントが、いかにしてCCS展開のスケールアップを加速し、かつ必要とされる投資を惹きつけることができるかということを議論しました。CMCにおいては、さまざまな国、および支援者であるステークホルダーが集まり、カーボンマネジメント技術を2030年までにギガトンレベルまで拡張するという目標を共同で支援します。議論では、とりわけ国際的な連携とコミットメントの役割、投資家の期待、「チャレンジ」を実装するために確保すべき各国の強力な行動とコミットメントの重要性などが強調されました。

 

 

最後に、GCCSIのEllina Levina、CCUS CEMのJuho Lipponenは、ワークショップからのテイクアウェイとして以下の重要なメッセージを強調しました。

 

  1. CCSに向けて、さまざまな事柄がミクロとマクロの両方のレベルで順調に整いつつあり、セメントなどの重要産業部門でもCCUSは脱炭素化のための重要な手段として受け入れられています。
  2. しかしながら、CCSを真に軌道に乗せるには、以下のような政策を組み合わせることが必要です。
  3. 排出者に対するインセンティブ。例えば、Cプライス、ディマンドプル(調達)など。
  4. インフラの貯留許可の合理化を図る。
  5. バリューチェーンに沿ってよりよい調整をおこなう。
  6. CCSの受容性と信頼性レベルの向上を一層構築していく必要があります。
  7. CCSは、利用できる解決策パッケージにおける重要な削減技術の一つです。解決策はどれも必要とされるものであり、ある一つの解決策がほかの解決策の犠牲のうえに成り立つことは求められていません。
  8. カーボンマネジメントはすべての国に対して恩恵をもたらすものである一方で、これまでは主に先進国に注目して議論がなされてきました。今後、新興国との連携をより深めていかなければなりません。
  9. GCCSIとCCUS CEMは引き続き協力し、CCSへの道のりにおいてステークホルダーを支援していきます。

 

 

 

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