概要
輸送
二酸化炭素(CO2)を回収施設より貯留サイトに安全かつ確実に輸送することは、CCSの重要なプロセスの一つです。 CO2輸送は、既に世界の多くの地域で行われていますが、大規模展開を可能にする為には輸送インフラへの投資が必要です。
ファクトシート:CO2の輸送
輸送
CO2はどのように輸送されますか?
CCS関連プロジェクトにおける大量のCO2輸送では、パイプラインが最も一般的な方法です。 CO2を含むさまざまなガスを輸送するパイプラインは、世界中にすでに数百万キロメートルもあります。
少量のCO2の輸送では、トラックや鉄道が使われます。例えば一部のプロジェクトサイトでは回収サイトから近くの貯留サイトへの輸送には、トラックが使用されています。しかし、長期的に大量のCO2の輸送を想定しているCCS関連プロジェクトでは、トラックや鉄道が輸送手段として使われることはまずありません。
船輸送は、世界の多くの地域にとってもう一つの選択肢になり得ます。ヨーロッパでは既に船によるCO2の輸送が小規模で行われており、食品用のCO2(約1,000トン)を大きな排出源から沿岸の配送ターミナルに運んでいます。
CO2の大規模な輸送(10万~40万m3)は、液化石油ガス(LPG)の輸送と多くの共通点があると思われます。 70年以上に渡り世界的な産業に発展したLPGの輸送技術には、豊富な専門知識やノウハウが蓄積されています。
CO2の輸送は安全ですか?
陸上および海底CO2パイプラインの開発と運用には大きな経験があります。現在米国では約50のCO2パイプラインが稼働しており、年間約6800万トンのCO2を輸送しています。
CO2パイプラインと船舶は、既に安全に管理されている天然ガスや石油等の炭化水素輸送よりもリスクが高くありません。さらに、 CO2輸送インフラの、安全で効率的な運用を促進する為の国際規格が現在開発されています。
CO2輸送をサポートするために必要なインフラストラクチャはありますか?
パイプラインの広範なネットワークは、陸上と海底の両方で既に世界中に存在しています。米国だけでも、350万kmの天然ガス配電線に加えて、約80万kmの有害液体と天然ガスのパイプラインがあります。現在、約6,500 kmのパイプラインがCO2を積極的に輸送しています。
とはいえ、今後世界中で長期的なCCSの展開をサポートするのに必要なパイプラインのインフラの規模はかなりのものです。今後30〜40年で建設されると推定されるCO2輸送インフラ(IEAの2050年迄にエネルギー関連のCO2排出量を半減させる為の最小コストの経路と一致)は、現在の規模の約100倍です。
CO2ハブ、クラスター、輸送ネットワーク
CO2輸送能力に対する最初の追加需要は、新しい回収専用施設、貯留施設、石油増進回収法(EOR)施設が稼働する為、段階的かつ地理的に分散した方法で展開される可能性があります。
CCSの大規模展開は、ハブまたはいわゆる基幹のパイプラインによって、ハブを介して、貯留シンクのクラスターに近接するCO2排出源にリンクすることで可能でしょう。ハブ、クラスター、およびネットワークは同じ意味で使用されることが多い用語ですが、プロジェクトを説明する為に使用する場合は、夫々微妙に意味が違ってきます。
CO2クラスターとは、CO2排出源のグループ、または地域内の複数の貯留サイトやEOR油田等を指す場合があります。米国のパーミアン(Permian)盆地には、パイプラインのネットワーク経由で、CO2が供給されるCO2-EORが行われている油田のクラスターがいくつかあります。
CO2ハブでは、様々な排出源からCO2を回収し、単一または複数の貯留サイトに輸送します。例えば、西オーストラリア州のサウス・ウエスト・ハブ(South West Hub)プロジェクトでは、南パース(Southern Perth)盆地のLesueur層に貯留するために、クウィンアーナ(Kwinana)およびコリー(Collie)工業地帯の様々な排出源よりCO2を回収しようとしています。
CO2ネットワークとは、複数の排出源にアクセスを提供する拡張可能な回収および輸送インフラです。
ハブ、クラスター、またはネットワークの一部として開発されるCCSプロジェクトのインセンティブには、規模の経済が含まれます(CO2パイプラインの建設・運用の単位コストが低くなる)。プロジェクト辺りのコストは、単独の基幹CCSプロジェクト(一つのCO2排出源に独自の小規模な輸送または貯留サイトを持つ)のコストよりも低くなります。調整されたネットワークによるアプローチは、排出源を含めたCCSプロジェクトへの参加する全員の参入障壁を低くすることができ、独自の輸送および貯留ソリューションを開発する必要がありません。