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最新ニュース:フランス、国家戦略の更新版で同国の炭素中立に向けた移行におけるCCUS軌道を概説
9th July 2024
トピック: Institute News
発行日:2024年7月9日
7月4日、フランス経済・財務・産業・デジタル主権省(French Ministry for the Economy, Finance and Industrial and Digital Sovereignty)は、国家CCUS戦略の更新版を発表し、フランスにおけるCCUS展開の現状と今後の展望を明確にしました。
同文書は、同国政府が2023年6月に公開協議のために発表したCCUS戦略草案に基づいており、EU産業カーボンマネジメント戦略(EU Industrial Carbon Management Strategy)やネットゼロ産業法(Net-Zero Industry Act)等、EU地域におけるCCUS開発をより広範に推進することが期待されているEUレベルにおける最近の進展も考慮しています。
同戦略は、同国の炭素中立に向けた移行においてCCUSが担うことが期待されている役割を提示しています。特に、同国におけるCCUSの規模拡大を可能にするために必要だとしてフランスが導入を計画している枠組を概説し、また、より多くのCCUSプロジェクトを実施させるために、利害関係者に規制的な確実性と経済的なインセンティブの双方を提供することを目指しています。
更新されたフランスの戦略によると、CCUSは、セメント、化学製品、鋼鉄、アルミニウム製造等、事業を脱炭素化するための代替策ないし採算性のあるソリューションがない産業から排出される、回避できないCO2の削減ために活用できます。また、廃棄物焼却、バイオマス転換、紙及び食品産業といった他の部門も、EU排出量取引システム(EU Emission Trading System:ETS)における将来の規制的な進展によっては、長期的にCCUSの利用から利益を得られる可能性があります。
戦略で概説されたCCUS軌道を基に、同国は2030年に産業排出量を5~10%削減すること、及び3つの明確な段階を通じて2050年までにネガティブ・エミッションを発生させることを目指しています。具体的に、同国は次の回収目標を掲げています。
- フランスのル・アーヴル(Le Havre)、ダンケルク(Dunkirk)、サン=ナゼール(Saint-Nazaire)及びローヌ(Rhône)軸の最も排出量が多い工業港湾地区に対応して、2~4か所のCCUSハブを設置することを通じて、2025~2030年にCO2年間4~8 Mt。
- 国内CO2貯留地の開発、CCSネットワークの設立ないし増加、及びEUレベルにおける将来の規制的な進展によってインセンティブを与えることで他の部門にもCCUS利用を拡大することによって、2030~2040年にCO2年間12~20 Mt。
- 孤立した排出源とCO2貯留サイトをつなぐ国及び欧州のCO2輸送インフラの創設を通じて、また、新旧の工業用地における残余排出量の回収、生物由来の排出源からの回収、ないし大気中からの直接回収によって2040~2050年にCO2年間30~50 Mt。
国家CCUS軌道と並行して、同戦略は、次の通り、同国におけるCO2回収・輸送・貯留イニシアティブをタイムリーに策定できるようにするために必要と考えられるその他の主要行動も明らかにしました。
- 製造会社が15年間の長期契約を締結することを可能にし、初の主要なCCSプロジェクト群の開発を前進させるものと期待されている炭素差金決済スキームを通じて、産業プロジェクトに公的資金援助を割り当てる。
- オープン、高い透明性及び差別なきアクセスの原則に基づいたCO2輸送に適用する規制的枠組を設計する。
- ロンドン議定書(London Protocol)の2009年改正を批准し、EU及びEEA圏外の国々と二国間協定を締結することで、フランス国内のCO2 貯留能力を開発し、北海及び地中海における貯留機会へのアクセスを確保する。
- 領地おけるCCUプロジェクトの普及を促進し、航空部門及び海運部門、並びに合成燃料ないしその他の材料の生産を通じて他の部門を脱炭素化する国家枠組を創設する。
この戦略の発表は、EU及び国レベルで採用された支援的な戦略や資金的インセンティブによってカーボンマネジメント技術を巡る機運がここ数年徐々に高まって来ている欧州のCCUS技術普及にとって極めて重要な時に行われました。
このCCUS戦略の更新版の発表をもって、フランスはCCUSの普及を加速させるために対策を講じている欧州の他の国々に加わることになり、同国内におけるCCUS技術の普及に向けた重要な進歩を示しています。
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